パレスチナ・ベツレヘムにある隔離の象徴「分断壁」、そこに描かれた数々のアートが意味することとは?

AI要約

パレスチナ・ベツレヘムの現状について報告。分断壁に描かれるアートの意味やパレスチナ人の苦悩、恐怖のストレスにさらされる状況が描かれる。

ジャーナリストと現地の声が通じ合い、問題を浮き彫りにする。イスラエル・パレスチナ問題の深刻さが強調される。

尊厳と希望を失わないパレスチナ人たちの姿に感動。落差の中での平和への願いが示される。

パレスチナ・ベツレヘムにある隔離の象徴「分断壁」、そこに描かれた数々のアートが意味することとは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、ジャーナリストの構二葵さんによるパレスチナ・ベツレヘムのレポートを紹介しました。

◆分断壁に描かれるアートの意味

戦火に喘ぐガザの一方で、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムでもイスラエルによる圧政が続いています。先日、この地域を取材したキャスターの堀潤は、「本来、約束されていたパレスチナ人の領地に入植(暴力などで一方的に住む場所を奪う行為)や軍事的な攻撃、圧力など多くのプレッシャーがかけられている」とその現状を解説します。

そんななか、今回はジャーナリストの構二葵さんがヨルダン川西岸地区南部にある街「ベツレヘム」の悲痛な現状を紹介。

ここは、西岸地区による攻撃からイスラエルを守る名目で2002年からイスラエルが分断壁の建設を開始。しかも、それは国連が定める境界線よりパレスチナ側に侵食しており、パレスチナ人の移動の自由を制限しています。

この分離壁に対し、ベツレヘム在住のウサマ・ニコラさんは、「牢獄の中にいるようです。新鮮な空気があり、大きな監獄の中でも働ける。しかし、私たちは囚人」と嘆く傍ら、「それでも私たちは逞しく、希望を失わない。なぜなら正義と平和を信じているから」と前を向きます。

分離壁には至る所にアートが描かれています。構さんによると、それは2004年10月にメキシコのアーティストが描き始め、以降さまざまなアートやメッセージが今なお増加。「暴力ではない形、平和的な方法で占領からの解放、そして抵抗を表している」と構さんがその意味を説明します。

ニコラさんも「このアートの主な発想はこの壁がセキュリティーウォールでないことを示している。これは、ただの隔離とアパルトヘイトの壁」と率直な思いを語ります。

数多くのアートのなかには世界的アーティスト、バンクシーによるものもあるそうで、「バンクシーは分断壁に抗議するために国内外のアーティストを招き、壁にアートを描いた。ベツレヘムは醜悪なコンクリート壁に囲まれ、大きな牢獄のようになっているということを表している」とニコラさん。

◆恐怖のストレスにさらされるパレスチナの人々

今回、構さんはおよそ5,000人が暮らすアイダ難民キャンプも取材。その中は3~4階建てのコンクリート製の建物が所狭しと並んでいます。

その壁には、自分たちが生まれ育った場所に帰るという意味を込めた“リターン”という言葉と鍵のモチーフがたくさん描かれています。

そんなアイダ難民キャンプで暮らす彫刻家のサミール・ローラスさんは、パレスチナの現状はとても悪いと悲嘆。そして、「人々は恐怖のストレスにさらされることなく安心して生きなければならない。一刻も早く解決しなければならない。日本は尊敬に値する教養のある国。そして、平和を愛している。あなたたちが私たちとともに不条理を終わらせるために立ちあがってくれることを願っています」と日本に向け、メッセージを送っていました。

構さんのレポートを受け、堀はイスラエル・パレスチナ問題の根深さ、弊害に改めて言及。ハマスがイスラエルに攻撃を開始した昨年10月7日以降、「ハマス=悪」という言説が目立ちますが、ハマスが実行統治しているのはガザであり、このヨルダン川西岸地区はハマスと関係ないそう。にも関わらず、ヨルダン川西岸地区では分離壁で移動の自由が奪われ、イスラエル人による入植で人権が奪われるなど、パレスチナの人々は日々苦しんでいます。

哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんは、「分離壁はイスラエルのパレスチナ政策の矛盾の現れ」と指摘。そして、「ヨルダン川西岸は比較的に穏健だが、このまま矛盾が深まれば、より過激な方向にいく」とガザのようになってしまうことを危惧し、「その責任の一端はイスラエル政府にあると思う」と主張していました。