5万人に1人の免疫不全、新生児検査で判明 男児は移植手術受け退院

AI要約

新生児検査で免疫不全症が発見され、治療を受けた男児が退院。広島県内初のケースで広島大病院と連携しNBSで発見。

男児はSCIDと診断され、臍帯血移植手術を受けて命をつないだ。NBSは早期診断を可能にする。

広島県では2万8395例を検査し、NBSの重要性が広まる中、男児の両親も訴える。

5万人に1人の免疫不全、新生児検査で判明 男児は移植手術受け退院

 新生児検査で5万人に1人ともいわれる免疫不全症が判明し、広島大学病院(広島市南区)で治療を受けた1歳10カ月の男児が3日、無事退院する。2年前に始まった「拡大新生児スクリーニング検査(NBS)」で早期発見され、治療につながった広島県内初のケースという。

 男児は、2022年9月生まれの叶羽(とわ)ちゃん。広島大病院と広島県、広島市が連携して同7月から始めたNBSで、県内1例目の重症複合免疫不全症(SCID)と診断された。

 生まれつき免疫細胞がうまく働かず、様々な感染症にかかりやすい病気だ。出生時は無症状だが、根治的治療が施されないと、ほとんどが1歳までに亡くなるというが、23年11月に臍帯血(さいたいけつ)による造血細胞の移植手術を受けた。合併症の治療が続いたが、生後すぐに感染症対策をしたことで移植手術が可能となり、命がつながった。

 NBSは、先天性免疫異常など発育に影響する可能性のある疾患を早く見つけ、適切な治療をするための検査。生後5~7日の赤ちゃんの足裏から少量の血液を採り、専門機関で分析する。17年に愛知県で始まり、23年12月時点で38都道府県で実施しているという。

 広島県では今年6月27日までに2万8395例を検査。この日は、広島大病院小児科の岡田賢(さとし)教授、広島大原爆放射線医科学研究所の浅野孝基准教授らが、叶羽ちゃんの元気な姿とともに記者会見した。岡田教授は「助かる命があるということを多くの人に知って頂き、できるだけ多くのお子さんにこの検査を受けてもらいたい」と語った。

 県内に住む叶羽ちゃんの両親は会見に、「まさか我が子がひっかかることはないだろうと軽い気持ちで(検査の)同意書にサインした」「スクリーニング検査でわかる疾患ならば、可愛い我が子の命を救うことができます」などとつづったコメントを寄せた。(編集委員・副島英樹)