女子高校生ら5人スイスで素粒子実験へ 世界的機関で日本から初選出

AI要約

CERNで実験が行われる日本の女子高校生チームが選出された。

チームは手作りの小型宇宙線イメージング検出器を開発し、ミュオグラフィ技術への応用を目指している。

探究活動を支援する仙台市の会社が、チームの素粒子研究への道を後押ししている。

女子高校生ら5人スイスで素粒子実験へ 世界的機関で日本から初選出

 素粒子物理学研究で世界的に知られる「欧州原子核研究機関(CERN)」(スイス)の施設で、日本の女子高校生ら5人のチームが今年9月、素粒子実験を行うことになった。CERNが世界の高校生を対象に公募した実験提案で、日本チームとして初めて採択された。幼いころの興味を探究活動につなげて後押ししたのは、仙台市の会社だった。

 ノーベル賞につながる実験も行われるCERNは、次世代の研究者を育てるため、世界の高校生らを対象に実験提案を募集する事業「Beamline(ビームライン) for(フォー) Schools」を、毎年実施している。今年は過去最高の461件の応募があり、日本チームを含む3件が採択された。

 選ばれたチーム「Sakura(サクラ) Particle(パーティクル)」は、女子学院高校(東京)や大阪府立北野高校、神奈川県立川和高校などに通う女子高校生ら5人で構成される。宇宙や素粒子に関心がある中高生の探究活動を支援する合同会社加速キッチン(仙台市)で出会ったメンバーだ。

 同社は、本人も素粒子の謎に挑む、田中香津生代表社員(早稲田大理工学術院総合研究所・研究院准教授)らが、宇宙や素粒子が好きな中高生が、自分たちの力で探究し、発表する世界をつくることをめざして、2020年に、大学生や大学院生らと立ち上げた。宇宙・素粒子分野の探究活動を随時募集しており、審査に通れば、検出器の提供、中高生による検出器製作・探究サポートを無償で受けられる。すでに200人近い中高生が支援を受けた。

 そんな中、今回の5人が1年以上かけて開発を進めてきたのが、手作りの「宇宙線イメージング検出器」。ミュー粒子の軌跡を測定することで、ピラミッドなど大きな建造物の内部を透視する技術「ミュオグラフィ」への応用をめざす。通常、検出器は大型で高額だが、今回開発したものは、手の平に乗るほど小さく、材料費も10万円程度に抑えている。

 今年3月には、高校生として初めて、高エネルギー加速器研究機構(つくば市)で、光速の電子ビームを使ったテストを行い、性能を実証。その成果を踏まえてCERNに実験提案し、採択された。