都知事選「R」ステッカー問題、マスコミの「報道しない自由」は有権者への裏切り  新聞に喝! ブロガー・藤原かずえ

AI要約

マスメディアが選挙報道において公正性や政策報道の不十分さ、有名候補者への過度な焦点を指摘。

無名候補者の政策評価が報道されず、報道量の少なさによって有権者の選択が制限された事例があった。

マスメディアは公正性を監視する使命も果たすべきであり、公職選挙法に反する事案も報道されるべきである。

都知事選「R」ステッカー問題、マスコミの「報道しない自由」は有権者への裏切り  新聞に喝! ブロガー・藤原かずえ

自由で公正な選挙は民主主義の根幹です。マスメディアには、有権者に資する候補者の政策に関する情報を伝達する使命があります。しかしながら、今回の東京都知事選挙においても、知名度をもつ有力候補者の勝ち負けを党派や政局絡みで報じる「戦略型フレーム」の報道が先行し、市民生活に直結する政策を報じる「争点型フレーム」の報道は十分とは言い難い状況にあったものと考えます。

特に憂慮すべき問題は、マスメディアが小池百合子、蓮舫、石丸伸二、田母神俊雄―の4氏を安易に有力と判断して報道を集中させたことで有権者の選択が事実上限定されてしまった点です。例えば、早稲田大学マニフェスト研究所による各候補者の公約の検証で大差をつけて最高評価を受けたのは、無名の新人候補の安野貴博氏でしたが、報道量の少なさは致命的で、約15万票を得たものの、順位は5位にとどまりました。

もちろん、乱立する候補者の中からマスメディアが有力候補者を合理的に選定し、限りある報道資源を集中させることは有権者に利益があります。しかしながら、過去の得票の経験的評価に基づく総合判断によって有力候補者を選定している現在の方法論では、たとえ政策の完成度が客観的に優れていようと無名の新人候補は無視されてしまうのです。この状況の打破には、客観的基準による政策の理論的評価またはリアルタイムに得る世論の統計的評価に基づく分析判断によって、有力候補者を選定する方法論が不可欠であり、その早急な取り組みこそ言論機関に課された至上命令です。

一方、マスメディアには選挙の公正性を監視する使命がありますが、今回の都知事選ではこの使命が必ずしも果たされたとは言えません。

例えば、告示前には蓮舫氏の陣営で事前運動の三要件を満たす可能性がある街頭演説やチラシの作成・配布が確認されました。小池氏の演説会場では一部聴衆が「やめろ」と大合唱して演説を中断させました。街頭では、何者かが蓮舫氏を想起させる「R」と書かれたシールを配布し、繁華街の公共物に大量に貼り付ける事案が発生しました。これらは少なくとも公職選挙法の精神に反する行為であり、交流サイト(SNS)で大きな論議を呼びました。しかしながら、これら公然の事実を実際に報道した全国紙は産経新聞のみでした。

特定の党派の政治家に対しては言葉狩りも辞さずにその一挙手一投足を監視する新聞が、民主主義を揺るがす公然の事実を報じないのは有権者に対する裏切りです。事案の可否を判断するのはマスメディアではなく有権者であることを肝に銘じる必要があります。

■藤原かずえ(ふじわら・かずえ) ブロガー。マスメディアの報道や政治家の議論の問題点に関する論考を月刊誌やオピニオンサイトに寄稿している。