「仕事をAIに奪われた先に、明るい未来があるのか?」…将来を憂う若者に語られた「未来を悲観しすぎない」ための考え方

AI要約

作家の鴻上尚史さんが新刊『君はどう生きるか』を発刊。AIの進化に対する期待と不安、産業構造の変化についてメッセージを送る。

特化型AIと汎用型AIの違いや未来の予測、新技術による産業構造の変化を例に挙げながら、AIによる仕事奪取の可能性を解説。

過去の技術革新が産業構造を変えてきたように、AIもまた新しい産業を生み出し、古い産業を置き換える可能性があることを強調。

「仕事をAIに奪われた先に、明るい未来があるのか?」…将来を憂う若者に語られた「未来を悲観しすぎない」ための考え方

いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。

『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。

『君はどう生きるか』連載第31回

『“匿名”を過信する日本人が陥りやすい「悲惨な末路」とは…公私が混在するネット社会を安全に生き抜くためにいま意識すべきこと』より続く

君は、AIが発展していくことが楽しみですか?それとも不安ですか?

「AIが人間の仕事を奪っていく」なんて言い方がさかんにされています。

AIの分類のひとつに、特化型AIと汎用型AIというものがあります。

特化型とは、文字通り、一分野に特化したものです。文章を書いたり、囲碁をしたり絵を描いたり天気を予測したりします。

汎用型というのは、まさに人間のようにあらゆる情報を総合して、創造的に考えられるAIです。現在、このタイプのAIはまだ完成していません。いつ完成するのかの予測も、2029年だという人もいれば、2200年に50%の確率で実現するという人もいます。つまりは、確実なことは何も分からないのです。

特化型AIによって、多くの人間の仕事は奪われると言われながら、それが一体どんな仕事で、それがいつかも、揺れ動いています。明日にもとって代わられるとあおる記事もあれば、10年、20年先だと予想する記事もあります。

「今ある仕事をAIに奪われた先に、明るい未来があるのか?」と不安になる人もいるかもしれません。

ぼくは演劇の演出家ですが、その昔、演劇は娯楽の王様でした。あちこちに劇場があって、多くの人々が集まりました。

それが、映画の登場によって、娯楽の王様は替わりました。人々は映画館に移動しましたが、やがて、映画もまた、テレビの登場によって、王座から去りました。

今、ネットの動画によって、テレビもまた王座から去ろうとしています。

新しい技術(テクノロジー)は、世界を変えます。

それは避けられないことです。

石炭から石油に替わったり、馬車や人力車から鉄道や自動車に替わった時には、新しい産業が古い産業の仕事を奪いました。

AIもまた、同じことをするだろうと予想できます。

それがいつで、どれぐらいの規模かははっきりしませんが、産業構造が変わるということだけは、はっきりしています。