トランプ前大統領「暗殺未遂翌日にゴルフ」のデマが流布! 識者が指摘する陰謀論の新背景「ブルーアノン」とは

AI要約

トランプ前大統領の暗殺未遂事件の翌日には、デマが広まり、SNS上での誤情報が問題となっている。

デマ投稿はQアノンやブルーアノンといった陰謀論者によって拡散されており、信頼性の低下が深刻化している。

米国のエコーチェンバー現象や大統領選挙における混乱が情報操作を助長している可能性がある。

トランプ前大統領「暗殺未遂翌日にゴルフ」のデマが流布! 識者が指摘する陰謀論の新背景「ブルーアノン」とは

《凄すぎだろ! 翌朝からゴルフだとぉ! これが、前日の夕方に暗殺されかかった人の行動なのか!》

 7月14日(日本時間)の米国・トランプ前大統領の暗殺未遂事件から一夜明けると、X上にはこんな投稿があふれていた。

 多くの投稿には、トランプ氏がゴルフ場でカートを運転している短い動画、もしくは静止画が添付されていた。

「最初は本物だと思った方も多かったのではないでしょうか。海外でかなりの数の拡散がなされると、日本にも“本当の情報”のように伝わってきました。しかし、これらはしばらくして、“デマ投稿”だったと判明しました」

 こう話すのは、米国でサイバー戦争などの取材経験がある国際ジャーナリストの山田敏弘氏だ。

 現在のXでは、冒頭のような内容が「誤情報」であることを指摘する投稿も多くあるが、それ以上に、デマを鵜呑みにした投稿も非常に目立っている。

 たしかに「CBS New York」は暗殺未遂事件後、トランプ氏がニュージャージー州の自身が所有するゴルフ場で、一夜を明かしたことを報じている。

 しかし、X上で共有されている画像や動画などは、過去のものであったことが判明しているのだ。

 今回のゴルフ場のデマ投稿について、山田氏は「単純な構図ではない」と考える。

「イーロン・マスク氏がXを買収してから、米国のXユーザーは非常に保守化していました。そこで、トランプ氏と親和性が高い極右の陰謀論者『Qアノン』が陰謀論をばらまいていたのですが、今度は『ブルーアノン』が台頭してきています。

『ブルー』は民主党を表わす、ブルーです。いわばQアノンの対局で、過激な左翼主義の陰謀論者ですね。彼らは今回の暗殺未遂について『あれは血糊だ』といった内容を喧伝しています。

 日本では、トランプ氏の健在ぶりのアピールと受け止められている『トランプ氏がゴルフをしている』というデマも、じつはブルーアノンが、暗殺未遂事件が“やらせ”だったと主張するために発信した可能性もあるとみられています」(山田氏・以下同)

 また暗殺未遂事件を発端に、ほかにもデマ投稿は発信されているという。

「もちろん誤情報ですが、事前に銃撃をわかっていた、という陰謀論も非常に多く発信されています。その根拠として、よく言われるのが『シークレットサービスが銃撃の直前に、報道陣を正面に移動させた』というものです。

 普通に移動させただけと思いますが、陰謀論者は『その瞬間を撮影させようとした』と言っていますね。ほかにも、トランプ陣営、共和党内部の犯行だというフェイクニュースも出ています。

 それも元をたどると、『ディープステート』という闇の政府がすべてを牛耳っている、と考える陰謀論者が『シークレットサービスもディープステートのグルなんだ』と言っているようで、こうした話を本気で信じている人もいます」

 米国内では、情報の信頼性が揺らいでいる“非常事態”なのかもしれない。

「これはトランプ氏自身の“功績”ですが、大統領時代に大手メディアを貶めることをやってきたこともあり、多くの人にとってニュースに触れる場所がSNSになっています。

 そうすると、似たような関心を持つ人が共有する情報しか目に入ってこなくなってしまいます。いわゆる『エコーチェンバー』と呼ばれる現象です。

 米国では、ニュース専門チャンネルに有料で加入しないとテレビのニュースは観られませんから、金銭的な問題から大手メディアの情報にアクセスできない人もいます。

 そのため、これまでは極右の陰謀論者ばかり注目されていましたが、民主党寄りの人々にもエコーチェンバーが広がってきているのです」

 まさに混乱のなか、米国大統領選挙はどういう結末を迎えるのか――。