「寝てるだけだよな」触れた頬は冷たく 京アニ事件・青葉被告が模倣、武富士放火遺族の嘆き やまぬガソリン凶行

AI要約

京都アニメーション放火殺人事件は、22回の公判を経て、青葉真司被告に死刑判決が言い渡された。事件が現代社会に突きつけた問いについて追求。

外川輝和さんの過去の記憶が呼び覚まされて、武富士放火殺人事件との関連性が語られる。ガソリン放火の凶行の威力についても触れられている。

武富士事件で犠牲になった妹への思いや、京都アニメーション事件の惨劇に対する遺族の苦しみが描かれる。両事件を通じて、社会全体に問いかけられるテーマが示唆される。

「寝てるだけだよな」触れた頬は冷たく 京アニ事件・青葉被告が模倣、武富士放火遺族の嘆き やまぬガソリン凶行

 京都アニメーション放火殺人事件は、京都地裁であった22回の公判を経て、今年1月、殺人罪などに問われた青葉真司被告(46)に死刑判決(控訴中)が言い渡された。2019年7月18日に発生した惨劇は間もなく5年を迎える。経済的困窮、孤立、虐待…。法廷で浮かんだ凶行の深層から、私たちはどんな教訓を紡ぐのか。事件が現代社会に突きつけた問いを追う。

 本州最北の地で、外川輝和さん(57)=青森県板柳町=の心はざわついた。「武富士の事件を見て、犯行に及ぼうと考えた」との青葉被告の告白に22年前、隣の弘前市で起きた武富士放火殺人事件の記憶が呼び覚まされた。犠牲になったのは妹の福井貴子さん=当時(30)=だった。

 「荼毘(だび)に付す時と合わせ、大切な人が2度焼かれる遺族の苦しみを想像できないのか」

 2001年5月8日。あの日は朝から雨だった。出張先から帰社して間もない午前11時半ごろ。親戚からの電話で人生が一変する。「たっこ(貴子さん)の会社、火事で大変だじゃ」。駆けつけた武富士弘前支店は真っ黒に焼け、周囲の異様な雰囲気にただの火事ではないと察した。弘前署で対面した妹の頬は黒く焦げていた。「寝てるだけだよな」。そう願って触れると冷たく、その場で泣き崩れた。

 犯人がガソリンに火を付けた直後、貴子さんの悲鳴で119番は途切れた。支店が炎に包まれるまでわずか3秒。従業員9人が死傷した。青葉被告は法廷で武富士事件になぞらえて「自分もやるなら最後の段階のことをやろうとした」と淡々と述べた。京都アニメーションを狙った凶行でよみがえった過去の亡霊に、外川さんの胸が詰まる。「怒りと悔しさ。それと、ショックでした」

 ガソリン放火の威力は計り知れない。京アニ事件の場合、階段の吹き抜けから3階まで一気に煙とガスが充満し、2分後には避難不可能な状態に陥ったとされる。両事件とも建物に法的問題はない。ただ、武富士の事件では、カウンターと仕切りに囲まれた狭い店舗構造や、ロープ式の避難器具がすぐ使えない状態だったことなどが避難を阻む一因となった。