<独自>航空人材、元自衛官を活用 需要増見据え国交省が防衛省と調整

AI要約

国土交通省が防衛省と協力して自衛隊出身者を旅客機パイロットと航空整備士として活用する方策を検討している。

航空人材不足による「2030年問題」の解決と、訪日客数拡大に向けた措置が必要とされる中で、退職自衛官を積極的に採用しようとしている。

主要航空会社のパイロットや整備士の高齢化が進行しており、新型コロナ禍による入学者減少の影響も懸念されている。

<独自>航空人材、元自衛官を活用 需要増見据え国交省が防衛省と調整

人手不足が顕著な旅客機パイロットと航空整備士を確保するため、国土交通省が自衛隊出身者の最大限活用に向けて防衛省と調整に入ったことが13日、関係者への取材で分かった。パイロットの場合、海外では軍関係出身者が4割近くを占めるとのデータもあり、国交省は将来の航空需要増大を踏まえ、即戦力として期待できる元自衛官への門戸を広げる。

政府は、令和5年に約2500万人だった訪日客数を12年には6千万人まで伸ばす目標を掲げている。ただ、バブル期に大量採用されたパイロットらが一斉に定年を迎える「2030年問題」の影響で運航への支障が懸念されており、国交省は航空人材の拡充に向け、退職自衛官を積極的に受け入れる制度の見直しや要件緩和を検討する。

国交省によると、主要航空会社のパイロット数は7091人(5年1月現在)。全体の6割を占める機長の年齢構成は50歳以上に偏りがみられ、6年後には大量退職時代に突入する。

出身構成をみると、定員108人の航空大学校と航空各社による自社養成がそれぞれ3割超と最も多い。一方、自衛官からの転身者は約4%にとどまり、直近5年の平均採用数はわずか5人。北米や欧州の航空会社では、軍や公的機関出身者が主要な人材供給源となっている。

整備士も状況は似ている。主要各社の整備士8467人のうち、50歳以上は39%。出身別では航空専門学校が約64%と最も多いが、新型コロナウイルス禍以降は入学者が半分以下に激減した。

自衛隊では職業訓練の中で航空整備士などの資格を取得することができるが、若年定年制により50代で大半が退職し、任期制の場合は30代半ばまでに退職する。退職後は民間企業に再就職するケースが多く、令和4年度は約8800人が退職した。

国交省は将来の訪日客6千万人を見据え、パイロットは約13%、整備士は約20%の増員が必要と試算。退職自衛官の活用を目指し、民間ライセンス取得の簡略化などを検討している。