岸田首相の認識、欧州側にも浸透 「欧州とインド太平洋は不可分」 連携に制約、課題も

AI要約

岸田文雄首相はNATO首脳会議で欧州とインド太平洋の安全保障を強調し、新たな協力を模索した。

欧州各国もインド太平洋への関与を強化し、対中抑止に取り組んでいるが、地理的制約がある。

日本とNATOは情報共有の強化を目指す一方、日本自身の防衛体制にも課題がある。

岸田首相の認識、欧州側にも浸透 「欧州とインド太平洋は不可分」 連携に制約、課題も

【ワシントン=千葉倫之】岸田文雄首相は11日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した。首相はスピーチや意見交換を通じて「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分だ」との認識を欧州の首脳と共有し、さらなる協力に合意する成果を得た。とはいえ、欧州とのインド太平洋での連携には制約や課題もある。

首相はスピーチで、欧州各国がインド太平洋に関心を強めている動きを歓迎。会議後には記者団の取材に応じ、日本や、日本を含むインド太平洋4カ国(IP4=日韓豪ニュージーランド)がNATOと新たに合意した協力を挙げて「地域を超えた同志国の連携の重要性が改めて確認された」と成果を語った。

NATOは今回の首脳宣言で、ウクライナ侵略を続けるロシアの「明白な支援者」だとして、中国を名指しで非難。ロシアや中国、北朝鮮を抑止するため、インド太平洋への関与拡大を強く打ち出した。首相が繰り返してきた「欧州とインド太平洋は密接不可分」との認識は、欧州側にも深く浸透してきている。

欧州側も近年、具体的な形でインド太平洋への関与を強めている。英国は3年前に続き、来年にも空母打撃群のインド太平洋への展開を予定する。イタリアやドイツも太平洋に艦艇を展開しており、各国空軍の派遣も相次ぐ。軍のプレゼンスは対中抑止に資する。

とはいえ欧州は遠く、実際の有事対応となれば大きな貢献は期待できないのも事実だ。NATOとIP4は今回、サイバーやテクノロジーなど4項目の協力を「旗艦事業」として合意したが、地理的制約にとらわれない分野が中心だ。

昨年にはNATOの連絡事務所を東京に置く案が一時浮上したものの、フランスの反対で棚上げとなった。対中姿勢などの温度差が完全に埋まったとみるのも早い。

日本とNATOは今回、専用回線を通じた秘匿情報の共有体制の強化などで合意した。一方、防衛省・自衛隊では特定秘密の不適切な取り扱いなど不祥事が相次ぐ。首相は「わが国の防衛に一部の隙も許されない」と立て直しを急ぐ考えを示したが、日本自身が取り組むべき課題は多い。