「ヤマト運輸」倉庫で働く社員が“熱中症対策”求め一人ストライキ決行 佐川は空調服「支給」、ヤマトは「自腹」の環境差も

AI要約

ヤマト運輸倉庫の正社員が熱中症対策不十分としてストライキを決行

男性側とヤマト運輸側の団体交渉で改善が約束されるも、不十分として追加対策を求める

男性の健康被害やヤマト運輸の対応に対して労働組合が全社的な改善を求める

「ヤマト運輸」倉庫で働く社員が“熱中症対策”求め一人ストライキ決行 佐川は空調服「支給」、ヤマトは「自腹」の環境差も

宅配便業界最大手である「ヤマト運輸」の倉庫で働く正社員の男性(55歳)が、会社に対し熱中症対策が不十分だとして改善を求め、8月19日に1人でストライキを決行。同日、東京都内で記者会見を行った。

男性が働く兵庫県内の倉庫は、18台の車が停車できる大きな営業所だというが、建物の構造上、風通しが悪く、外壁が金属パネルで熱を持ち、さらに窓がさびていて半分程度しか開かない状態だという。

男性によれば、最大40度まで計測できる気温計が40度に振り切れ、熱中症指数が「危険」を指している日もあったという。しかし、当時実施されていた熱中症対策は、塩あめの配布と、業務用扇風機1台、スポットクーラー2台、ウォーターサーバーの設置のみだった。

すでに行われた男性側とヤマト運輸側の団体交渉により、業務用扇風機とスポットクーラー2台の追加導入およびさびついた窓の修繕などは約束されたが、男性は十分ではないとして、さらに以下の対策を求めストライキに踏み切った。

①倉庫内でつけっぱなしにすることで温度上昇をもたらしている配達車のエンジンを可能な限り切ること。

②倉庫内の温度・熱中症指数を記録、管理すること。

③空調服、首に巻く扇風機、スポーツドリンクなどの支給および、通風または冷房設備の充実。

④労働者の健康状態の確認、安全衛生教育の実施、応急処置の流れの共有をすること。

⑤全社的な熱中症対策の実態調査。

男性を支援する労働組合「総合サポートユニオン」の佐藤学氏は会見で、「物流で社会を支えるエッセンシャルワーカーが、命を危険にさらされながら働いている実態がある」として、ヤマト運輸に対し全社的な改善を求めた。

配送ドライバーとしてヤマト運輸に25年以上勤務していた男性は、昨年8月中旬から倉庫勤務に異動。倉庫内を回り荷物の仕分けなどを行う業務をしているが、今年の6月末頃から倉庫内の暑さを感じ、7月には倉庫内の気温計も40度を示すようになっていた。男性が慢性的な頭痛などを抱えて8月に病院を受診した際には、医師から熱中症と診断されたという。

「とにかく暑さがひどく、ヘルメットをかぶっているのであせもも治りません。吐き気や立ちくらみはもうとっくに通り越していて、慢性的に頭が痛い状態を薬で散らしながらなんとかやっています。倉庫内の労働環境がいかにひどいかを会社にも知っていただきたく団体交渉を求めました」

しかし、7月23日に男性側が団体交渉を求めると、営業所から気温計が撤去されたという。

8月9日に行われた団体交渉では、ヤマト側は気温計について「壊れていて、最大でも36度だった」等と主張。しかし、実際の倉庫内が何度だったのかについて、ヤマト側は記録を残していなかった。

また、倉庫内の温度上昇は、配達車のエンジンをかけっぱなしにしていることが原因のひとつだとして、男性はエンジンを切ることを求めた。ところが、ヤマト運輸のサービスである「クール宅急便」のためには一部の配達車のエンジンを切ることができないため「クール宅急便がある以上は仕方がない」との回答だったという。

しかし、倉庫の管理者によっては、作業する労働者がいるときは「できる限り」エンジンを切るよう呼びかける人もいるといい、同じヤマト運輸の倉庫であっても管理者によって労働環境が異なる実態もあるという。