離島の水俣病被害者ら「週1回療養に通えるよう手当上乗せを」…伊藤環境相との再懇談で窮状訴え

AI要約

水俣病の患者・被害者団体と伊藤環境相との再懇談が11日に行われ、離島に住む未認定患者らが医療体制や暮らしの厳しい状況を訴え支援拡充を求めた。

伊藤氏は水俣市や離島を視察し、患者団体と懇談した後、胎児性患者と面会した。

熊本県知事は厳しい状況に向き合う姿勢を表明し、救済策の推進に取り組む考えを示した。

 水俣病の患者・被害者団体と伊藤環境相による再懇談の最終日となった11日、熊本、鹿児島県の離島に住む未認定患者らで構成する2団体の会員らは、本土よりも厳しい医療体制や暮らしの窮状を訴え、支援の拡充を求めた。(門岡裕介、小波津晴香、石原圭介)

 伊藤氏らは水俣市の丸島漁港を出発し、劇症型の水俣病患者が多く発生した水俣市の沿岸地域を船上から視察した。

 午前10時半頃に鹿児島県長島町の離島・獅子島に到着し、「水俣病被害者獅子島の会」(滝下秀喜会長)のメンバーら約15人と懇談に臨んだ。

 滝下会長は現状の離島手当は不十分とし、「物価高騰や経済状況にあわせ、せめて水俣に週1回療養に通えるよう1万円程度に上乗せしてほしい」と要望。約20年前に水俣病認定の申請運動に関わっていたという支援者の荒木千史さん(47)(佐賀県鳥栖市)は「(国や県は)患者が黙ることが解決策だと思っているのではないか。医療も福祉も前向きに考えてほしい」と語った。

 午後、伊藤氏らは熊本県天草市の御所浦島に入った。10日に続く懇談となった「水俣病患者連合」(松村守芳会長)からも離島手当に関する言及があり、伊藤氏は「(増額)できる方法を任期中に編み出す」と答えた。

 5月の懇談に同席した熊本県の木村敬知事は8、10、11日の再懇談について「苦しみの実相を初めてしっかり目にし、耳にすることができた。こうした厳しい状況に、県が国、自治体とともに向き合っていきたい」と総括。被害者の救済策については、「関係自治体、場合によっては(原因企業の)チッソに協力してくれるよう働きかけをしていかなければいけない」と述べた。

 伊藤氏は離島での懇談後、水俣市内のグループホームで、胎児性患者の金子雄二さん(68)と面会し、「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会」の加藤タケ子事務局長(73)が同席した。

 金子さんは数年前から言葉を発することは難しくなった。加藤さんは表情から「来てもらって良かったと伝えようとしているのでは」との思いをくみ取り、伊藤氏に知らせたという。

 伊藤氏は金子さんの還暦祝いや入所時、成人式の写真なども見学し、「かっこいいですね」などと声をかけたという。加藤さんは「金子さんは患者であっても堂々としている。生きてきた履歴を見てほしかった」と話した。