不信呼ぶ「行きすぎた非公表」相次ぐ米兵の性犯罪、プライバシー保護理由に情報共有されず

AI要約

沖縄県で在沖縄米兵の性的暴行事件が相次ぎ、県民の怒りが高まっている。この事件は被害女性の人権侵害だけでなく、情報隠蔽や非公表などの問題も浮き彫りになっている。

県警が事件を非公表し、外務省も事件を把握しながら情報共有を怠ったことが明らかになっている。日米の通報手続きも形骸化しており、対応が不十分で再発防止が困難になっている可能性がある。

地元の反発が高まり、隠蔽の意図を疑う声もある。個人情報の保護は重要だが、不都合な事実を隠蔽せずに真相を明らかにすることの重要性が問われている。

不信呼ぶ「行きすぎた非公表」相次ぐ米兵の性犯罪、プライバシー保護理由に情報共有されず

在沖縄米兵の性的暴行事件が相次いで発覚した沖縄県では、政党や市民団体が連日、外務省沖縄事務所に抗議する事態に発展。県議会も米軍などへの抗議決議を全会一致で可決した。地元の反発を招いているのは、被害女性の人権を踏みにじる犯行態様だけではない。県警が被害者の「プライバシー保護」などを理由に事件を公表せず、外務省も被告が起訴された3月の時点で事件を把握しながら、報道で事件が発覚する6月まで県などに情報を共有していなかったことも大きな要因だ。

■通報手続きが形骸化

「個別の事案の判断にはなるが、被害者のプライバシー保護や捜査、公判への影響を考慮した」

県警幹部は事件を非公表とし、県に伝えなかった理由をこう語った。ただ、犯罪統計には反映させており、県から問い合わせがあれば回答。3カ月に1回程度開催される県議会の米軍基地関係特別委員会で、罪名と件数を報告していたという。

日米地位協定に基づく平成9年の日米合同委員会の合意では、外務省が米側から在日米軍が関係する事件などの情報を受けた場合、防衛省側に通報し、同省から県や関係自治体に伝えると定められていた。こうした日米の通報手続きが形骸化していた可能性がある。

■隠蔽の意図疑う声も

関係者によると、今回の事件の情報は米空軍兵長、ブレノン・ワシントン被告(25)が起訴された3月、警察庁から外務省にもたらされたが、「『外務省限り』という捜査情報だったため、外務省独自の判断で情報を伝えることができなかった」という。

その後、別の米海兵隊員(21)が県内の成人女性に性的暴行をしたとして5月に逮捕され、6月に不同意性交致傷の罪で起訴されていたことも判明。1件目の事件が関係機関で情報共有され、米軍の綱紀粛正と再発防止が図られていれば、2件目の事件を防げた可能性があると野党が政府の対応を批判した。

玉城デニー知事の支持母体である「オール沖縄会議」の関係者は「プライバシー保護が理由と言っているが、世間に明らかにしたくないという意図が働いたのではないか」と指摘。6月の県議選や米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設や6月に実施された県議選などへの影響を考慮し、「隠蔽(いんぺい)したのでは」と疑問視する。

個人が特定されないよう被害者の保護に最大限配慮しなければならないのは言うまでもないが、プライバシー保護を理由に安易に一切非公表とする取り扱いは、不都合な事実を隠しているといった不信を呼びかねない。