黒川元検事長の定年延長巡る文書、不開示の取り消し確定へ…国側が控訴断念

AI要約

2020年の閣議決定を巡る訴訟で、国の不開示決定が取り消されたことについて、国側と原告が控訴しない方針を固めた。

法務省が検察官の定年延長規定を変更し、黒川氏の定年延長を目的とした文書の開示が争われた。

判決は解釈変更が急速に進められたことを考慮し、文書の開示を求める上脇教授の主張を認めた。

 黒川弘務・元東京高検検事長の定年を延長した2020年の閣議決定を巡り、法務省内で協議した文書の開示の是非が争われた訴訟で、国の不開示決定を取り消した1審・大阪地裁判決について、国側が控訴しない方針を固めた。原告の上脇博之・神戸学院大教授も控訴しない方針で、控訴期限の11日を過ぎれば判決が確定する。

 検察官の定年は当時、検察庁法で63歳と定められていた。国家公務員法の定年延長規定は従来「検察官に適用しない」とされていたが、法務省は19年12月頃から解釈の変更を検討し、20年1月の閣議決定前に「適用される」と解釈が変更された。

 先月27日の判決は、解釈変更が短期間で進められ、黒川氏が63歳で定年となる予定日の7日前に閣議決定されたことを踏まえ、「目的は黒川氏の定年延長だった」と言及。法務省が所有する解釈変更に関する検討文書が、開示すべき対象になると判断していた。

 この文書は「勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について」と題されたA4判2枚などで、「検察官にも国公法の規定が適用されると解するのが自然だ」と法解釈が記されている。国側は、上脇教授による別の開示請求に応じて文書を開示したが、今回の訴訟では「黒川氏のために解釈変更を協議し、作成した文書ではない」とし、開示対象の文書は存在しないと主張していた。

 国側は、解釈変更は黒川氏のためではないという従来の主張は維持する一方、開示すべき対象とされた文書は原告側に開示済みであることから、判決が確定しても影響はないと判断したとみられる。