安全保障の「特定秘密」が流出の危機に…自衛隊と防衛省のヤバすぎる「当事者意識の欠如」

AI要約

機密保全の法体制が整いつつあるが、実行に緊張感が欠け、海自OBが辞任を決めた特定秘密の違法適用が問題となっている。

特定秘密保護法により導入された特定秘密は適格者のみが扱えるが、海自を含む複数の自衛隊で違法適用が明らかになった。米国との情報連携にも支障が生じる可能性がある。

違法適用は海自だけでなく陸自、航空自衛隊、背広組にも及び、防衛省全体の信頼問題となっている。過去のイージス艦の情報漏洩事件も思い出されている。

「機密保全の法体制は整いつつある。でも、それを実行する緊張感に欠け、当事者意識を持てないでいる。それが原因です」

酒井良海上幕僚長が辞任を決めた「特定秘密」の違法適用に関し、海上自衛隊OBはこう率直な感想を漏らした。安全保障上の機密情報を、資格がない海上自衛隊員複数に扱わせていたなどの実態が報じられたのを受けてのことだ。

特定秘密は2014年に施行された「特定秘密保護法」によって導入されたもの。資格者のみが特定秘密を扱えるようにし、漏洩には厳しい罰則が課せられる。

米国など同盟国とは互いに、機密保全を前提に機微な情報を融通する。今回のように適正評価を受けていない自衛官が特定秘密を取り扱う事態は、信頼の喪失につながり情報の連携に支障をきたす。

しかも特定秘密の違法適用は、海上自衛隊だけではなかった。陸上自衛隊、航空自衛隊、防衛省内部部局の「背広組」も違法適用が認められた。懲戒処分は現役幹部ら数十人規模に及ぶという。防衛省全体の問題であるのは明らかだ。

前出の海自OBは、「米国と米軍を呆れさせたイージス艦の情報漏洩事件を思い出す」と続けた。

防空戦闘重視のイージスシステムを搭載した護衛艦のイージス艦は機密度の高さで知られるが、2007年に米国から提供されたイージス艦に関する軍事機密が、本来は機密データに接することのない自衛隊員の手元に渡っていたことが発覚した。

事件を掴んだのは神奈川県警で外国諜報機関の捜査にあたる外事課だった。護衛艦乗員の2等海曹を夫に持つ中国人女性を不法滞留容疑で捜査したところ、横須賀市の自宅から自衛隊の「特別防衛秘密」にあたるイージス艦のデータ入り記録媒体が見つかった。

女性にスパイ行為をさせる中国のハニートラップか、と緊張が走ったが、その心配はなく夫の海曹は別のデータ(発禁女性画像)を入手するために記録媒体をコピーしたところ機密情報が入っていた。捜査によって海自隊員38名が機密情報に関与し、漏出源と特定された3等海佐の罪が、その後の公判で確定した。

米国と米軍が驚き呆れたのは、機密情報捜査が神奈川県警という地方警察によって行われ、その情報が共有されなかったことだ。事件発覚時、シーファー駐日大使は、「大使の私が、なぜ日本の新聞で事件を知らねばならないのか」と激怒した。

当時、「特定秘密保護法」はなく、元3等海佐は「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」によって裁かれた。

日本は機密保全の法体制を徐々に整えている。防衛上の秘密情報や特定された秘密情報を保護対象にした法律には、「自衛隊法」、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」、そして「特定秘密保護法」がある。この3つで、保護情報の範囲と法の順守対象者を広範囲に定めている。