役所広司さんが普段着で通った喫茶店、41年の歴史に幕 長崎

AI要約

諫早市の中心商店街にある喫茶店「コーヒーショップ森」が41年間の歴史に幕を閉じた。常連客に愛された店主の感慨深い思いや、役所広司さんが訪れたエピソードなどが振り返られた。

築約200年の木造店舗は昭和の趣きを残し、昔ながらの雰囲気が漂っていた。脚本家市川森一さんのテレビドラマ「親戚たち」でロケ地として使用され、役所広司さんも訪れたことで知られる。

閉店の最終日には常連客が集まり、昔話に花を咲かせた。店主の息子は、喫茶店がお客さんのくつろぎの場として親しまれたことを喜んでいる。

役所広司さんが普段着で通った喫茶店、41年の歴史に幕 長崎

 長崎県諫早市の中心商店街「魚棚(うおんたな)通り」で41年間営業した喫茶店「コーヒーショップ森」が29日、閉店した。諫早出身の俳優、役所広司さんも通った老舗。常連客に「お母さん」と慕われ、店を切り盛りした森和枝さん(87)は「お客さんに恵まれてここまでやってこられました。感謝しかありません」と、感慨深げだった。【松尾雅也】

 江戸時代に造られた築約200年の木造店舗はかつて、旅館や医院として使われた。森さんの夫、哲哉さん(故人)が1983年、それまでの釣具店を喫茶店に衣替えした。開業時に改装したしつらえは、昭和のたたずまいを残していた。

 諫早出身の脚本家、市川森一さんが手掛けたテレビドラマ「親戚たち」(85年)で、一帯がロケ地に。主演した役所さんは撮影の合間や休みの日に訪れては、カウンター席に静かに腰掛け、サイホンだてのブラックコーヒーで一息入れた。

 森さんは「役所さんは朝起きたばかりで、普段着のまま来られることもありました。気取らない地元言葉での私とのやりとりに居心地の良さを感じてくれたのかな」と振り返った。

 最終日の29日は、ブラウン管テレビの映像や昭和のヒット曲が流れる店内で、常連客らが昔話に花を咲かせた。近くでとんかつ店を営む折目久さん(71)は「寂しかなぁ。店の仕込み前に味わうコーヒーが楽しみだった」と惜しんだ。

 森さんの次男で店主の研二さん(53)は「喫茶店は息抜きの場所。これまでお客さんの『オン』と『オフ』の切り替えの場として使ってもらえたことがうれしい」と話した。