有料で山菜採りできる長野側、立ち入り規制の群馬側が「穴場」に…県境は遭難やクマ出没の危険性も

AI要約

長野県境にほど近い群馬県嬬恋村の山間部で山菜採りのための立ち入り規制区域に入る人が続出している。長野県側は有料で入山が可能なため、群馬県側が「穴場」として人気があるが、遭難やクマの目撃が増えている。

万座峠周辺は希少なネマガリダケの産地として知られ、長野県側では入山管理協力金を支払うことで立ち入りが認められる。一方、群馬県嬬恋村の規制区域には毎年多くの人が立ち入り、警察が警戒を強化している。

地元ではネマガリダケを使った郷土料理が愛されており、山菜採りが風物詩として根付いているが、遭難事故も発生しているため警戒が必要とされている。

 長野県境にほど近い群馬県嬬恋村の山間部で今月、山菜採りのため立ち入り規制区域に入る人が続出している。有料で入山が可能な長野県側には大勢の人が押し寄せるため、群馬県側が「穴場」となっている。常連らは「この地域の風物詩だ」などと悪びれてもいないが、遭難が起き、クマの目撃も増えていることから、警察は警戒を強化している。

(桜木優樹)

 両県境の万座峠周辺は、ネマガリダケとよばれる希少なタケノコの産地として知られる。通常は両県側で入山が規制されているが、長野県側はネマガリダケが旬を迎える6月頃の約1か月間に限り、入山管理協力金(当日券1000円)を払えば立ち入りが認められる。昨年は計約4700人が訪れた。

 こうした中、隣接する群馬県嬬恋村の規制区域に入る人が毎年相次いでいる。群馬県警長野原署などによると、「手つかず」のエリアでのネマガリダケ採取が目的とみられる。同署などが9日午前、万座峠から県境まで約5キロを巡回したところ、道路脇で無人の駐車車両7台を発見。近くにいた持ち主らに口頭で注意した。また、記者が15、16日に同区間を訪れると、多いときは約15台が道路脇に止まっていた。ほぼ長野ナンバーだった。

 長野県では、ネマガリダケを使った「たけのこ汁」が郷土料理となっている。毎年群馬側に来るという須坂市の60歳代男性は「長野側は人が多すぎる。ここのネマガリダケは太く、虫もついていなくて質が良い」と説明。同県千曲市の60歳代男性も「数十年来ており、この地域の風物詩のようなものだ」と平然と話した。

 しかし、一帯では昨年6月、須坂市の60歳代男性が友人とはぐれて2日間行方不明となる遭難事故もあった。幸い救出されたが、周辺はクマザサが人の背丈まで生い茂って方向感覚を失いやすく、警察の救出部隊でも100メートル進むのに1時間かかったという。嬬恋村総務課によると、遭難事故が起きると地元の消防団員も出動しているが、「団員も慣れていない土地で二次遭難の恐れがある。立ち入らないでほしい」とする。