選手村跡地で全国初「水素で発電するまち」を実用化 <シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

AI要約

東京五輪の選手村跡地で水素を活用した取り組みが始まった。

晴海5丁目西地区で水素ステーションがオープンし、都市ガスから水素を製造している。

水素を活用してまち全体で電気や熱を供給する取り組みが全国初で試行されている。

選手村跡地で全国初「水素で発電するまち」を実用化 <シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

まちで水素をつくり、エネルギー源として利用する全国初の取り組みが、東京五輪の選手村跡地で始まった。「シリーズ SDGsの実践者たち」の第33回。 

■エネルギーの一部に水素を活用

東京都中央区の晴海5丁目西地区。「HARUMI FLAG」と名付けられたこのまちは、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの選手村だった場所だ。選手の宿泊施設は住宅に改修された。大会開催がコロナ禍で1年延期されたことで、改修の完成が遅れたものの、2024年1月から入居が始まっている。

まちには21棟の中層マンションがあるほか、現在2棟のタワーマンションが建設中だ。住宅の総戸数は5632戸にのぼる。商業施設も開業し、晴海西小・中学校も新たに開校した。

実はこのまちでは、脱炭素社会を目指す新たな取り組みが行われている。それは、まち全体で水素をエネルギー源として活用していることだ。 

■水素ステーションで都市ガスから水素を製造

その核となる施設が、まちの一角につくられた水素ステーション。3月28日にオープンした。まちと都心を結ぶ水素バスや、個人が所有する水素自動車などが、ここで水素の充填を行っている。

しかも、充填されている水素は、この場所で製造されたものだ。ステーションの一角にある設備で、都市ガスから水素を取り出している。

できた水素は車両への供給だけではなく、まちの道路の下に埋設された水素専用のパイプラインによって、住宅や商業施設に運ばれていく。パイプラインによってまち全体に水素を供給する取り組みが実用化されたのは全国初だ。

■街全体で水素からできた電気や熱を活用

パイプラインで届けられた水素は、住宅の場合は純水素型燃料電池によって発電され、電気と熱を生み出す。電気は共用部分に、熱はマンションの敷地内に設置された足湯やペットの足洗い場などに活用されている。

商業施設でも、純水素型燃料電池による発電によってできた電気が使われている。水素を燃料にした発電は、電気以外には水と熱が出てくるだけで、二酸化炭素を排出しない。また、分譲住宅でも送られてきた水素を使って家庭用燃料電池で発電して、できた電気と発電の際に発生する熱を各家庭で使用している。