外遊びが減少。多世代が「遊び」でつながる地域のコミュニティ拠点としての「冒険遊び場」が必要な理由とは?

AI要約

子どもの外遊び離れが進んでおり、公園での遊具撤去や遊び方制限、苦情による廃止などが増加している。

外での遊び時間の減少が子どもの非認知能力の低下や生きる力の弱体化につながっている可能性がある。

PLAYTANKは外遊びの重要性を認識し、冒険遊び場の整備や子育て支援プログラムなどを通じて、子どもの健やかな成長を支援している。

外遊びが減少。多世代が「遊び」でつながる地域のコミュニティ拠点としての「冒険遊び場」が必要な理由とは?

外で遊ぶ子どもが減りつつあります。

遊具の撤去やボール遊びが禁止されている公園が増加し、中には「子どもの声がうるさい」という苦情を受けて廃止される公園もあります。また、子どもが外に出かけたとしてもゲームやスマホを手に楽しんだり、商業施設内のプレイルームで遊んだりするなど、昔と比べて外遊びのあり方自体に変化がみられます。

そんな「外遊び離れ」は、子どもの健康や成長にどのような影響を与えているのでしょうか?

今回は、子どもが暮らす「まち」のどこででも、自由な外遊びができるようになることを目標に「冒険遊び場」づくりに取り組んでいる、NPO法人PLAYTANK代表の中川奈緒美(なかがわ・なおみ)さんに、子どもが健やかに育つ上で外遊びが果たす役割や、子どもの外遊び離れを防ぐために私たちにできることについて、お話を伺いました。

――近年、子どもの外遊び離れが加速していると聞きます。実際に外で遊ぶ子どもは減っているのでしょうか?

中川さん(以下、敬称略):はい、減っています。PLAYTANKが2018年に行ったアンケート調査では、親世代、シニア世代ともに「子どもの頃、平日にどれくらい外で遊んでいましたか?」という質問に対して、2~3時間という回答が一番多かったのですが、子どもに一番多い回答は0~30分になっていました。その後、この状況が改善したとは思えません。

この結果は、小学校が土曜日・日曜日休みになって、平日の授業時間が長くなったことが一番の理由ですが、他にも習い事や塾のスケジュールが合わなくて、一緒に遊ぶ友だちがいない、室内でも一人でも楽しめるゲームやYouTube等の登場で、遊びの選択肢が広がった、治安や交通状況の悪化から未就学児だけでは外で遊べないなど、理由はいくつもあります。

またこの何年かは、熱中症予防のため、保育園、学校などの施設で、夏期は外で遊べない日が増えました。こうした気候変化も、子どもの外遊び離れが加速する一因です。

――外で遊ぶ時間が減ったことで、子どもの成長にどのような影響が出てきているのでしょうか?

中川:子どもの体と心の成長への影響は確実にあると思います。特に子どもの「生きる力」が、弱くなっているように感じます。「非認知能力」ともいわれていますね。

非認知能力とは、何が起こるか分からない未来の社会を、自分で切り開いていくために必要な力で、これは誰かに教えてもらって身に付くものではありません。子ども自身が、主体的に成功と失敗を積み重ねることで蓄えていく力なのですが、その大切な機会を損失してしまっているのが現状です。

かつては、外遊びで異なる年齢の子どもが一緒に遊んだり、時には仲違いや、失敗を重ねたり、生きていく力を遊びながら学んでいく環境が当たり前だったんです。

遊んでいる子どもから飛び出す「これなんだ?」「どうしよう?」といった声は、探求や思考を。「あ! いいこと思いついた!」は、創造力や臨機応変な対応が身に付く合図だと私たちは考えています。

――昨今は公園に設置する遊具の撤去や遊び方の制限もみられます。

中川:そうですね。老朽化に伴う遊具の撤去は仕方のないことですが、代わりに設置される遊具が安全優先で、子どもの興味関心を刺激しない、「やりたい!」が生まれない環境になってしまうことは残念ですね。近隣からの苦情で、「大きな声を出さないように遊ぼう」といった主旨の看板まで立つ公園があることも残念です。

非認知能力が低下すると、「失敗してもいいから挑戦してみよう」という意欲が湧かなくなります。挑戦する機会が少ないからか、最初から正解や成功する方法を知りたがる子どもが増えている気がします。

――そんな子どもたちの課題を解決するためにPLAYTANKを立ち上げたんですね。

中川:はい。最初は、2003年に子どもたちの外遊び離れを懸念した私と友人で立ち上げた「光が丘プレーパーク」という市民活動から始まりました。

もともとわが子のために始めた活動でしたが、続けていく中で、この「子どもが外で自由に遊べない」という問題は全国的に広がっていることに気付き、2011年にNPO法人あそびっこネットワークを立ち上げ、2019年に現在のPLAYTANKに改名しました。

――現在PLAYTANKはどのような事業を展開しているのでしょうか?

中川:まずは、練馬が「子どもが外で遊んで育つまち」になるために、区からの委託や補助を受けて、外遊び場を運営したり、プレーパークの立ち上げをサポートしたりしています。

市民活動から始まり20年続けた「光が丘プレーパーク」は、2024年から地域の保護者たちが新しい市民団体をつくり、PLAYTANKと共催ということになっています。

また、週7日開催の「練馬区立こどもの森」といって、子どもが自然や地域の人と交流しながら育つことを目指す「公立の冒険遊び場」の施設運営も、他の企業との合同事業として行っています。練馬の原風景である、農家の屋敷林の跡地を活用した、畑や果樹もある環境です。

そして、放課後を学童保育で過ごす子どもが増えたことを受けて、「練馬区立こどもの森」で毎日遊ぶ学童保育事業も、区の補助を受け運営しています。

中川:また、新しい子育て支援の形として、練馬区内8カ所の公園で自由な外遊びができる、外遊び型子育てのひろば「おひさまぴよぴよ」という区の事業を受託しています。こうした事業により、子どもの外遊び離れの予防につながればと思います。