子育ての「脱・紙地獄」! 産後2カ月までの書類は90枚以上。デジタル化で夫婦間の情報格差の解消にも【東京こどもDX会議リポート】

AI要約

東京都が子育て分野のDX推進を目指し、東京こどもDX2025会議を設立。第2回会議で具体的な取り組みが報告された。

保活ワンストップシステムやプッシュ型子育てサービスなど、子育て支援サービスの計画が進行中。

子育て当事者の声を反映するため、ゲストスピーカーが現状と課題を共有し、DX化の重要性を訴えた。

子育ての「脱・紙地獄」! 産後2カ月までの書類は90枚以上。デジタル化で夫婦間の情報格差の解消にも【東京こどもDX会議リポート】

東京都は、子育て分野の行政サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようと、国や区市町村、民間団体と連携した「東京こどもDX2025 つながる子育て推進会議」を2023年12月に設置しました。そして、2024年6月7日に第2回会議が開かれました。その内容をリポートします。

東京都は、一般社団法人GovTech東京と協働して「こどもDX」に取り組んでいます。2025年までに、アプリから必要な子育て情報が届く「プッシュ型子育てサービス」、保育園探しや見学予約・入園までの手続きがオンラインで完結する「保活ワンストップシステム」のほか、マイナンバーカードで予防接種の申請ができるサービス、親と子のマイナンバーカードをスマホにかざせば給付金の申請が完了するサービスといった、子育て支援サービスを実現する予定です。

この日の会議では、東京都、国、区市町村、民間企業の関係者が集まり、それぞれの立場から現状と課題を共有し、今後の方針について話し合われました。そのなかで、子育て当事者の声を反映するため、2名のゲストスピーカーからの発表がありました。

ゲストスピーカーの1人は、株式会社ワーク・ライフバランス シニアコンサルタントの川本孝宜さん。夫婦共働き家庭で10歳と5歳の子どもがいる川本さんは、子育て当事者の時間と労力を還元し、子育て当事者間の情報の差を解消するためにもこどもDXの推進が重要、と意見をしました。

「子育て当事者が多くの時間と労力を要するのは『移動する・待つ・調べる・書く・保管する』ことです。妊娠・子育て期の行政手続きには区役所に足を運ぶのが前提です。妻が妊娠中には、大きいおなかでわざわざ区役所に行かなければならなかったし、上の子を一緒に連れて行ったときには周囲に迷惑をかけないか気づかわなくてはいけないことが、とても大変そうでした。

手続きのためのたくさんの書類を読み、書き、さらに保管もしなくてはなりません。夫婦で『あの書類どこにやったっけ? 』とやり取りすることも多く、大変さを感じました。

出生届や、定期健康診査、予防接種、給付や助成といった手続きについて、オンライン化や申請の自動化などによって、ワンストップ・ワンアクセスなしくみができれば、これらの時間と労力を還元できるのではないでしょうか。たとえば手続きの簡便さで15分の時間ができたら、夕食に副菜を一品追加して作るとか、子どもに絵本を読んであげるとか、子どものつたない話をきちんと聞いてあげる、といった子どもと接する時間や家族との時間を増やしたいです」(川本さん)

川本さんは、保活もオンラインシステム化することによって「入所基準や自分の持ち点を入力すれば、どの保育園に入れそうかといったシミュレーションができ、区役所の職員の負荷も軽減できるはず」と話します。

さらに川本さんは、夫婦間での子育てに関する情報格差も感じていたそうです。

「長男出産前、私の仕事が長時間労働だったことから、子育てに関する情報収集を妻に任せてしまいました。それによって夫婦間の情報格差が生まれ、妻も『しょうがないよね』とあきらめモードになり、ちょっとした心の溝が生まれてしまったように思います。DX化によって夫婦それぞれに必要な情報が通知されれば、当事者の夫婦が一緒に子育てにかかわっているという心情面にもアプローチでき、夫婦関係への好影響も期待できると思います」(川本さん)