「阪神淡路の恩」が巡り巡って世界へ…日本の「あしなが」奨学金に救われたアフリカ人学生の「ココロザシ」

AI要約

日本の遺児支援団体「あしなが育英会」は海外にも事務所を構えており、ブラジルでもアフリカ人学生の育成を行っている。この取り組みは、阪神淡路大震災をきっかけに始まり、日本の支援への感謝の気持ちから始まったものだ。

アフリカの優秀な遺児学生を受け入れ、日本や世界の名門大学に就学させる育英会の取り組みが「あしながブラジル」でポルトガル語圏の学生にも展開されている。育英会の100年構想の一環で、リーダーシップ育成プログラムも提供されている。

低所得国への恩返しとして始まった「あしながブラジル」の活動は、震災復興の際に世界各国からの支援を受けた経験から生まれた。母体の育英会の理念を引き継ぎ、アフリカ人学生を育成する取り組みが展開されている。

日本の遺児支援団体「あしなが育英会」は海外にも事務所を構えており、そのうちのひとつがブラジルにある。どのような支援活動をしているのか。サンパウロ在住フォトグラファー兼ライターの仁尾帯刀さんが取材した――。

■阪神淡路大震災をきっかけにアフリカ人学生を支援

 親を病気や事故で亡くした子供や、重度の障害により親が十分に働けない家庭の子供の学費を支援するNGO「あしなが育英会」(以下、育英会)は世界6カ国にオフィスを構えて、海外ネットワークを広げている。その中のひとつがあるのがブラジルだ。

 サンパウロ市を拠点に活動する現地法人「あしながブラジル」は、ブラジルにありながら、主にアフリカ人学生をサンパウロ大学などのブラジルの名門大学に就学させることを通じて有望な人材の育成に取り組んでいる。

 2019年に事務所を開設する前の2016年から、パンデミックによる新規受け入れ中断を経て、これまで30人のアフリカ人学生を迎えてきた。母体の育英会同様に、あしながブラジルが対象とするのは、事故や病気などにより片親、または両親を亡くした学生だ。

 日本の遺児支援のNGOとそのブラジル法人がなぜアフリカ人学生の人材育成を行うのか。

■低所得国への恩返し

 「もともとのきっかけは日本で起きた阪神淡路大震災なんです」

 あしながブラジル副会長のアンドリュー・カストロさん(33)は語る。

 1995年1月17日に発生し、多くの人が命を落とした阪神淡路大震災は、当時倒壊した阪神高速などのショッキングな映像が世界中に伝えられた。

 「震災からの復興には世界の国々からの資金と人材の支援がありました。兵庫県に義援金を送った国のなかにはウガンダのような低所得国も多かったんです。育英会創始者の玉井義臣会長はこれに大変感銘を受け、アフリカ諸国への恩返しとして支援活動を始めたんです」

 あしながブラジルの奨学制度は、母体である育英会の「あしながアフリカ遺児高等教育支援100年構想」の一環で行われている。

 アフリカでは英語圏のウガンダとフランス語圏のセネガルの東西アフリカの2カ国に拠点を構え、サハラ以南のアフリカ49カ国それぞれから1名ずつ選抜した優秀な遺児学生に受験準備とリーダーシップ育成プログラムを授け、日本や世界の名門大学に就学させてきた。

 あしながブラジルはこの構想にのっとり、ウガンダ支部にブラジル人スタッフを配属し、ポルトガル語圏の学生を受け持っている。