「クーリングシェルター」進まぬ指定、自治体間で格差…住民の滞在空間確保などの条件がハードル

AI要約

山口県内の自治体で熱中症特別警戒アラートに備えたクーリングシェルターの指定が進んでおらず、市町による差が生じている。

防府市は51施設を指定し、岩国市や下松市は公共施設のみを指定。指定条件の厳格さや管理者の協力の必要性が指定を難しくしている状況。

未指定の市町も対応を急ぎ、山口市は職員確保や経費捻出に検討を進めており、県内全体での設置を呼びかけている。

 命に危険を及ぼすような酷暑の発生が予測された場合に発表される環境省の熱中症特別警戒アラートに備え、冷房の利いた施設を避難所として一般開放する「クーリングシェルター」(指定暑熱避難施設)の指定が山口県内の自治体で進んでいない。県によると、実施済みは全19市町のうち防府、岩国、下松、宇部の4市にとどまり、自治体の間で差が生じている。(小林隼)

 シェルターは4月施行の改正気候変動適応法に基づき、市町が公共・民間施設を避難所として指定する。同月24日から運用が始まったアラートの発表時は、指定施設を一般開放することが管理者に義務づけられた。

 県内で指定数が最も多い防府市は今月1日、市内51施設をシェルターとして定めた。民間18施設と公共33施設で、それぞれ2~30人の収容が可能。一部の施設を除き、アラートの発表時以外も住民が身を寄せて暑さをしのげる。

 市は昨夏から独自の熱中症対策として公民館や福祉施設に休憩所「涼み処」を設置しており、こうした取り組みが改正法施行後の円滑な対応につながった。市健康増進課の担当者は「アラートの有無に関係なく、最寄りの施設で気軽に涼んでほしい」と話す。

 一方、岩国市は5月16日に市内16施設を指定したが、全て公共施設だった。下松市も今月3日付で市役所のみを指定した。両市とも施設数が不足して避難者を収容できない事態や職員がいない閉館日の対応が懸念され、民間施設の追加などを検討している。

 シェルターの指定には施設の管理者の同意を得て協定を交わすことが求められる。条件として〈1〉冷房設備の保有〈2〉アラート発表時の一般開放〈3〉住民が滞在できる空間の確保――を満たさなければならず、指定が難航する要因になっている。

 未指定の市町も対応を急ぐ。山口市は施設に充てる職員の確保や休日・夜間の対応、必要経費の捻出について検討を進めている。市環境政策課は「危険な暑さにいつ襲われるかわからない。できるところから体制を整えたい」としている。

 県によると、シェルターの設置は市町の判断に任せられており、具体的な指定期限などはない。ただ、熱中症対策として有効とみられることから、県環境政策課の担当者は「先行事例の紹介を通じて県内の市町に設置を呼びかけたい」と話す。