激動の半生振り返る回顧展 「描く人、安彦良和」機動戦士ガンダムの原画ほか初公開資料など約1400点(兵庫県立美術館)

AI要約

安彦良和氏の軌跡をたどる回顧展が兵庫県立美術館で開催される。

展示では安彦氏の幼少期から現在までの作品約1400点が紹介される。

安彦氏は戦争と人間のありようにも向き合い、現代の紛争にも警鐘を鳴らしている。

激動の半生振り返る回顧展 「描く人、安彦良和」機動戦士ガンダムの原画ほか初公開資料など約1400点(兵庫県立美術館)

「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインを手がけ、アニメーター、漫画家として現在も活躍する、安彦良和氏の軌跡をたどる回顧展が8日から兵庫県立美術館で始まる。(6/8~9/1まで)

回顧展「描く人、安彦良和」は、安彦氏の幼少期から現在までの創作活動の足跡をたどる約1400点の原画、資料を「6章」に分けて構成。小学生時代の理科ノートのイラストや、高校卒業間際に描いたスペイン内戦がモチーフの漫画、大学の学生運動期の機関紙に始まり、アニメーターとして手がけた作品、ガンダムの登場キャラクター、アムロやシャアのスケッチ、宇宙戦艦ヤマトの絵コンテのほか、漫画家として歴史と近現代史をダイナミックに描いた「ナムジ」「虹色のトロツキー」から「乾と巽-ザバイカル戦記」など現在まで続く作品の原画の数々も展示。初公開の資料も含まれる。

北海道遠軽町に開拓民3世として生まれ、弘前大学では学生運動に参加し逮捕、その後、上京してアニメーター、漫画家として活動してきた。今回の展示は、少年期の歩みから現在の創作まで多岐にわたる作品を取り上げ、そこに共通するテーマに迫る初の試みとなっている。

安彦良和氏はこれまでの創作のなかで、戦争と人間のありようにも向き合ってきた。その重要な視座が「小さき者の視点」だ。戦争という大きな悲劇のなかで、小さき者が犠牲となっていく現実。それは彼が手掛けたガンダム作品のファクターのひとつでもある。また、戦争が「正義と悪」という単純化した二元論で語られる危うさも、作品を通して問うてきた。

いま世界で起きている戦争や紛争、ウクライナやパレスチナの状況をどう見ているのか。安彦氏は言う。

「パレスチナのガザやウクライナのことで非常に気になっているのは、善悪の決めつけが最近強いなという気がするんです。ウクライナかロシアかあるいは、ゼレンスキーかプーチンか、みたいなね。そこまで行ってしまうと、ちょっと違うんじゃないかという気がする。ガザにしてもパレスチナかイスラエルかという、どちらが善でどちらが悪かというような捉え方が非常に最近強くなっている。そういう捉え方は生意気な言い方をすれば、危険だと。そのとき、『小さき者の視点』というのが非常に重要じゃないかと思うんです。その中でユダヤ人にせよ、パレスチナ人にせよ。あるいは、ウクライナ人にせよ、ロシア人にせよ。いろんな悲劇に巻き込まれているだろうと。そこにどういう問題があって解決すべきどういう課題があるかということを考えるべきじゃないか。そんな思いが日々強くなっています」