迷いクジラ「淀ちゃん」処理、埋設地候補ある大阪府と協議せず…海洋投棄より費用大幅減の可能性

AI要約

大阪湾に迷い込んで死んだクジラの処理費が大阪市の試算の2倍以上に膨らんだ問題で、市が、大阪府と死骸の埋設について協議をしないまま、海洋投棄を決めていたことがわかった。

南に約10キロ離れた堺市西区の府産業廃棄物最終処分場では、2021年7月に府が約920万円かけてクジラを埋設した実績があった。

海洋投棄は、船舶の航行に影響がない海域まで複数の船でクジラを運び、おもりをつけて沈める必要などがあり、「高度な技術を要する困難な方法」と説明。

 大阪湾に迷い込んで死んだクジラの処理費が大阪市の試算の2倍以上に膨らんだ問題で、市が、大阪府と死骸の埋設について協議をしないまま、海洋投棄を決めていたことがわかった。府は埋設の実績のある用地を管理しており、埋設されていれば処理費は大幅に削減できた可能性がある。市監査委員は、海洋投棄を選んだ市の判断に「疑義がある」と指摘している。

 「淀ちゃん」と呼ばれたクジラは昨年1月9日、大阪市の淀川河口付近で見つかり、11日に動かなくなった。水産庁の対応マニュアルでは、死骸の処理方法について「埋設」や「焼却」、「海洋投棄」を挙げている。

 南に約10キロ離れた堺市西区の府産業廃棄物最終処分場では、2021年7月に府が約920万円かけてクジラを埋設した実績があった。府と大阪市の共同部署・大阪港湾局に入る市の海務課は昨年1月12日、同じ大阪港湾局の府の堺泉北建設管理課に当時の対応について問い合わせ、地元への説明などに1週間ほど時間がかかったことなどを伝えられた。

 海務課は、クジラの体内にガスがたまって破裂する懸念があり、処理を急ぐ必要があると考え、府に埋設の受け入れまでは打診せず、協議もしなかったという。

 クジラは同13日に死んだことが確認された。海務課は、他に埋設の候補地はなく、焼却も事前に細かく解体するための人手や機材が必要になることから困難と判断し、海洋投棄の準備に入った。当時の松井一郎市長も同日夕、記者団に対し「できれば海に帰してあげたい」と語っていた。

 海務課は同17日、市内の海運会社に処理を依頼。同社は2日後、クジラの死骸を土砂運搬船に積み込み、120キロ以上離れた紀伊水道沖に沈めた。市は同社と随意契約を結び、処理費は市の試算の2倍以上となる8019万円に膨らんだ。

 市監査委員は今年4月に公表した監査結果で、海洋投棄を選んだ市の判断を疑問視した。

 海洋投棄は、船舶の航行に影響がない海域まで複数の船でクジラを運び、おもりをつけて沈める必要などがあり、「高度な技術を要する困難な方法」と説明。また、日本鯨類研究所のデータを分析したところ、国内で21~23年度に処分されたクジラの死骸でその方法が判明したのは34件あった。このうち28件が埋設で、海洋投棄は淀ちゃんも含めてわずか2件だった。