東海道五十三次の「エロパロディ」を描いた恋川笑山ゆかりの地「藤沢」…舞台に不器用な男と盗賊の攻防を描いた歴史小説

AI要約

東海道五十三次を巡る旅を楽しむためのガイドブック『時代小説で旅する東海道五十三次』から抜粋。

JR藤沢駅周辺の遊行寺や道場坂の歴史や風光明媚な景色を紹介。

遊行寺や道場坂にまつわる文学作品や箱根駅伝との関連性についても触れられている。

東海道五十三次の「エロパロディ」を描いた恋川笑山ゆかりの地「藤沢」…舞台に不器用な男と盗賊の攻防を描いた歴史小説

 日本橋を出発点に、53の宿場を経て京都三条大橋を終着点とする東海道五十三次。

 その約490キロメートルにわたる長い旅路の上には、四季の変化に富んだ美しい国土、泰平無事の世の艶やかな賑わいが確かにあった。

 各宿場を舞台にした時代小説を解説しながら、江戸時代当時の自然・風俗を追体験する旅好きにはたまらない一冊『時代小説で旅する東海道五十三次』(岡村 直樹著)より一部抜粋してお届けする。

 『時代小説で旅する東海道五十三次』連載第7回

 『まるで「江戸時代の少年ジャンプ」…幼馴染との淡い恋や故郷に迫る大悪党との対決も! 青春盛りだくさんな「歴史小説」』より続く

 『八州廻り桑山十兵衛 劇盗二代目日本左衛門』(佐藤雅美)

 ☆宿場歩きガイド

 JR藤沢駅北口下車。小田急電鉄、江ノ島電鉄も乗り入れており、駅周辺は湘南地域でも有数の繁華街を形成している。

 駅から遊行寺通りを歩くこと20分、境川をわたると、広い石段がある。弥陀の「四十八願」になぞらえて48段になっている。登ったところが遊行寺。

 遊行寺は時宗の総本山で、時宗は、鎌倉時代中期に一遍によって開かれた。諸国を行脚してひたすら念仏をすすめた。遊行しながら庶民に信心を説いたので、広く根をおろした。一遍、およびその法灯を継いだ僧を、遊行上人と呼んだ。同寺所蔵の「一遍上人絵伝」は鎌倉時代の絵巻物で、当時の庶民生活を活写している、と評価が高い。国宝である。

 境内に樹齢600年という銀杏の樹が枝を広げ、その下で家族連れが弁当をつかっているのがほほえましい。

 遊行寺前の坂は道場坂とも呼ばれ、箱根駅伝の難所だ。復路8区(平塚~戸塚間の21・5km)は、優勝、シード権争いが熱を帯びてくる区間だが、ラスト5km地点に待ち構えているのが遊行寺前の道場坂。デッドヒートに、拍手と声援が交錯する。

 一方、恋川笑山の『旅枕五十三次』は、「此宿大に繁花にてはたごやもみな希麗(ママ)也。飯盛もいたつてよし」と記す。何ですって、恋川笑山なんて知らないですと。知らざあ、言って聞かせやしょうか。

 笑山は幕末艶本作家の三羽烏で、『旅枕五十三次』『東街道五十三次』など絵入りの艶本で知られるが、遊行寺とは縁が深い。