日中韓FTA、中国補助金是正なるか 米中対立の中、「二枚舌戦略」も必要

AI要約

日中韓3カ国が、日中韓自由貿易協定(FTA)の締結交渉の再開で合意した。経済が低迷する中国が前向きで、日本は中国の補助金政策など懸案に対応する。

日中韓FTAは、3カ国間の貿易・投資を活性化させる取り組みで、2019年以来中断していた交渉が再開された。

日韓は米中対立や中国の過剰生産に適度に配慮しながら、自動車の関税撤廃など高いレベルの連携を目指している。

日中韓3カ国が、「日中韓自由貿易協定(FTA)」の締結交渉の再開で合意した。経済が低迷する中国が実現に前のめりで、日本は中国が補助金政策といった懸案の協議に応じると判断した。中国という大きな市場へのアクセスを維持したい狙いもあるが、米中対立が激しさを増す中、米中に適度に配慮した「二枚舌戦略」が求められそうだ。

日中韓FTAは、国内総生産(GDP)で世界の2割を占める3カ国間の貿易・投資を活性化させて経済成長につなげる取り組みだ。しかし3カ国の関係悪化で、2019年を最後に交渉は中断していた。

今回の交渉再開は中国の強い求めを受けたものだ。不動産不況が続く中国は内需停滞などで経済が低迷しており、日韓の投資を呼び込みたい狙いがある。日韓は中国の過剰生産を問題視し、それを招く補助金政策や国有企業の優遇といった懸案を巡り中国を協議の場に引き出せるとみている。

日中韓は、すでに東南アジアなどとともに経済連携である「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」を立ち上げている。日中韓FTAではより高いレベルの連携を目指し、補助金などのルールに加えて、自動車の関税撤廃などに向けて話し合う見通した。

一方、日韓は米国が主導し、中国の経済的威圧に対抗する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にも参加。すでにサプライチェーン(供給網)強化に関する協定が発効し、参加国の間で脱中国に向けた動きも出ている。

中国が日韓とのFTAの交渉再開に動いたのは日米韓関係を切り崩したいとの思惑もある。ただ中国は2010年にレアアース禁輸に突然踏み切るなどの過去があり、国益最優先の中国の行動には常に警戒が必要だ。

それでも米国に追従し中国市場という実を逃すのは得策ではない。みずほリサーチ&テクノロジーズの月岡直樹主任エコノミストは「米国企業も中国詣でをしている。中国とはメリットを享受できる一定の関係が必要だ」と話している。(中村智隆)