ジョージアで強まる欧州の風、ワインやグルメに見る東西交流の歴史 ロシア脅威に揺れ動く【けいざい百景】

AI要約

ジョージアはアジアと欧州の間に位置し、EU加盟を目指す国だ。政治や経済が揺れ動く中、国旗や欧州旗が随所に掲げられている。

国会前でデモが続き、ロシアとの関係やEU加盟に影響を与えている。ワインや茶、観光業など様々な産業を持つジョージア経済を支えている。

ワインはジョージアの誇る産物であり、伝統的な製法で作られるアンバーワインが特に有名だ。

ジョージアで強まる欧州の風、ワインやグルメに見る東西交流の歴史 ロシア脅威に揺れ動く【けいざい百景】

 ロシアの南でアジアと欧州の間に位置するジョージア。この国名を聞いて何を思い浮かべるだろうか。酒好きはワイン、食通ならシュクメルリ、かつての呼称グルジアで記憶する人もいるかもしれない。昨年末に欧州連合(EU)の加盟候補国に認定され、欧州への統合路線を歩みながら、政治や経済で揺れ動くジョージアの今を見つめた。(時事通信経済部 工藤玲)

 ジョージアの首都トビリシで5月、アジア開発銀行(ADB)の年次総会が開かれた。私は取材のため、日本からカタール・ドーハ経由でトビリシに入った。空港からの道にはガソリンスタンドやバス停、ファストフード店、商業施設が立ち並ぶ。印象的だったのは、さまざまな場所に国旗と欧州旗がセットで掲げられていたことだ。

 市街地ではウクライナの国旗も加わり、三つの旗がはためくところも多かった。ウクライナと同様に旧ソ連構成国の一部として、ロシアの軍事的脅威にさらされてきたジョージア。ロシアのウクライナ侵攻はEU加盟へと背中を押した。

 滞在中は毎晩、親欧米派のデモ隊が、ジョージアやEUの旗を手に国会前に参集する様子を目の当たりにした。昨年3月に撤回され名称を変えた「外国の影響」法案の国会審議を巡り、デモは今年4月に再び起こされた。法案はロシアの「外国エージェント(スパイ)」法に似ており、言論の自由の規制につながると批判されている。ロシアに融和的と受け止められれば、EU加盟は遠ざかる。国会前には夜遅くまで若者が集まり、ベビーカーを引いて参加する人もいた。

 ジョージア経済を支える産業には、観光業のほか、茶やブドウ栽培を中心とした農業や畜産業、紅茶・ワインなどの食品加工業が挙げられる。ワインは主要輸出品目で、日本でも見かける機会がある。クヴェヴリという卵形の土器で熟成させる製法で有名だ。

 ワイン発祥の地という説もあり、文化として定着している。家庭での醸造も認められているようだ。宿泊したホテルの朝食会場には、牛乳やオレンジジュースと並んで赤ワインがあった。

 白ブドウを使って赤ワイン醸造と同じように皮や種も一緒に発酵させて作る「アンバーワイン」が代表的だ。日本ではオレンジワインとして扱われているが、ジョージアでは伝統的製法で作った白ワインに分類される。ワイン店店主は、クヴェヴリで作るとより濃い琥珀(こはく)色になると説明してくれた。「アンバー」に色づいた白ワインに誇りと自信を感じた。