GDPで日本を抜いたドイツで浮上し始めたEU離脱の現実味

AI要約

極右政党AfDの共同党首が2025年の総選挙でEU離脱を問う国民投票の実施を提案。

EU離脱による経済への影響や支持率低下など、背景を明らかに。

EU離脱を掲げる極右政党の台頭が欧州各国で顕著化。経済への影響は懸念される。

 ドイツの極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)の共同党首の発言が物議を醸している。同党が2025年の総選挙で政権を奪取した場合、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を実施するという発言だ。

 ドイツがEUを離脱すれば、EU単一市場を離脱することになるため、EU加盟国との間の貿易取引に関して免除されていた通関業務が発生する。ユーロ放棄による独自通貨の導入もドイツ経済を強く圧迫するだろう。

 EU離脱は、EUに不満を抱える有権者に向けた強いメッセージ。AfDのような民族主義政党によって、EU離脱は定期的に蒸し返される主張となるだろう。

 (土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ドイツの極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)のアリス・ワイデル共同党首が、同党が2025年の総選挙で政権を奪取した場合、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を実施すると発言したことが物議を醸している。各国の極右政党と同様、AfDもまた、EU離脱を掲げることは集票に有効な手段になると考えているようだ。

 ワイデル共同党首がEU離脱の是非を問う国民投票の実施を謳った背景には、AfDの支持率の低下があると考えられる。AfDの支持率は、2023年中頃に連立与党である社会民主党(SPD)と同盟90/緑の党(B90/Gr)を抜き、最大野党である中道右派のキリスト教民主同盟・同社会同盟(Union)に次ぐ2位にまで躍進した(図表1)。

 【図表1 主要政党の支持率】

 AfDは、オラフ・ショルツ政権による積極的な気候変動対策や、寛容な移民・難民政策に対して不満を高める有権者の「受け皿」として支持を集めてきた。しかし2024年の年明けに、AfDの幹部が移民の排斥を謀議したとの疑惑が浮上したことを受けて支持率が急落し、SPDに支持率2位の座を譲ることになった。

 とはいえ、AfDは旧東ドイツを中心に支持を集めており、地方議会でも一定の勢力を築いている。2025年10月までに予定されている次回のドイツの総選挙では、それが主に比例代表制(正しくは比例代表制を主に小選挙区制の要素を加味した小選挙区比例代表併用制)で行われるため、AfDは議席を増やし、国政への影響力を強めよう。

 ドイツ以外のEUの国でも、極右政党は、EUを離脱して政策主権を回復しようと主張する。しかし英国のEU離脱が証明したように、少なくとも短期的には、EUから離脱した国の経済は悪化する。EU離脱により、それまでEU各国との間で統合されていた市場を切り離す必要があるが、そのコストが、離脱した国の経済を圧迫するためだ。

 例えば、モノやサービスの貿易取引を考えてみよう。