営業収益の約9割を「東海道新幹線」が稼ぐ! 特異な鉄道収益力を誇る「JR東海」とはどのような企業なのか

AI要約

1987年に誕生したJR東海は、東海道新幹線を中心に急成長し、営業収益も増加してきた。2023年には新幹線が主要収益源となっており、他のJRグループとの違いが明確になっている。

JR東日本やJR西日本と比較すると、JR東海の営業収益の単体割合が高く、特異性が際立っている。在来線ではなく新幹線が主要収益源となっている点が注目される。

創業以来の長い歴史に刻まれたJR東海の成功と将来のビジョンが重要であり、論争や政治的影響よりも、同社の鉄道事業の神髄に焦点を当てるべきである。

営業収益の約9割を「東海道新幹線」が稼ぐ! 特異な鉄道収益力を誇る「JR東海」とはどのような企業なのか

 リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる政治的な論争や、「国商」「最後のフィクサー」と呼ばれた名誉会長・葛西敬之氏(2022年没)などの影響もあり、JR東海は多くの人にとって複雑でさまざまなイメージを抱かせる存在かもしれない。しかし、一般の人たちが本当に知りたいのは、創業以来の長い歴史に刻まれた、同社の鉄道事業の成功と未来への壮大なビジョンではないか。本連載「リニアはさておき」では、創業から現在に至るまでの歴史を掘り下げ、鉄道事業の神髄を探っていく。

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 JR東海は、正式には東海旅客鉄道といい、1987(昭和62)年4月1日に日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化により誕生した。JR東海が引き継いだのは、東海道新幹線のほか、在来線では

・名古屋鉄道管理局

・静岡鉄道管理局

を中心に、

・長野鉄道管理局

・金沢鉄道管理局

・天王寺鉄道管理局

の一部である。東京と大阪に本社を置いた国鉄東西二分割案ではなく、名古屋に本社のあるJR東海が生まれたことは、中部エリアの経済界にとって大きな意味を持つこととなった。

 JR東海発足後における経営の転換点となるような大きな出来事といえば、1991(平成3)年10月新幹線保有機構から新幹線設備の譲り受け、

・1992年3月:300系投入とのぞみ誕生

・1997年10月:株式上場

・1999年12月:JRセントラルタワーズ完成

・2003年10月:品川駅開業・全列車270km/h化

・2011年5月:国土交通大臣が中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体および建設主体に指名

・2017年2月:JRゲートタワー完成

だろう。このように、JR東海は東海道新幹線を中心に歴史を刻んできた。

 まず、JR東海の営業収益の推移をみてみよう。

・1987年度:(単体)8746億円(連結)データなし

・1990年度:(単体)1兆1013億円(連結)1兆1548億円

・2018年度:(単体)1兆4648億円(連結)1兆8781億円

・2020年度:(単体)5417億円(連結)8235億円

・2023年度:(単体)1兆4173億円(連結)1兆7104億円

 JR発足時は、単体の営業収益が9000億円弱であったが、わずか3年後の1990(平成2)年にはバブル景気も手伝って1兆円を突破した。以降、2018年に過去最高となる約1.5兆円を記録し、コロナ禍の2020年に大きなダメージを受けるものの、2023年はほとんど持ち直しているといっていい。

 また、単体と連結の営業収益を比較すると、2023年では単体の割合が82.8%と圧倒的に多いことがわかる。2023年の運輸収入の内訳をみると、

・新幹線:1兆2479億円

・在来線:948億円

となっており、東海道新幹線が単体の営業収益の88.0%を、連結では73.0%をただき出している。

 これは、JR東日本やJR西日本の2023年の営業収益と比較すると、JR東海の特異さが際立ってくる。

・JR東日本:(単体)1兆9872億円(連結)2兆7301億円 単体割合72.8%

・JR西日本:(単体)9442億円(連結)1兆6350億円 単体割合57.7%

 ちなみに、JR東日本の場合、在来線関東圏の運輸収入が1兆775億円、単体の営業収益に占める割合が54.2%もあり、主な収益源が新幹線のJR東海とは全く異なる。