高齢化する世界、資産運用者に迫る変化と決断-課題は先送りできず

AI要約

ニューヨーク連銀で15年間、ソブリン債危機の歴史を分析してきたファンドマネジャーが、米国債のリスクが高いと結論。

高齢化、医療費増加、財政赤字拡大などの要因で米国債を避け、金の保有を増やしている。

世界の高齢化に備え、債券を減らして株式や商品を増やす戦略が注目されている。

(ブルームバーグ): ニューヨーク連銀で15年間、ソブリン債危機の歴史を分析してきたイダンナ・アッピオ氏は、一つの結論に達した。米国債は保有するにはリスクが高過ぎるというものだ。同氏は現在、1380億ドル(約21兆5000億円)の資産を運用するファースト・イーグル・インベストメンツでファンドマネジャーを務める。

アッピオ氏が下した結論の背景にはインフレの加速、政府が負担する医療費の増加、財政赤字の拡大がある。世界が急速に高齢化しているという事実に合わせてポートフォリオを準備する時期が到来している。

同氏は株式とクレジットの保有バランスを取るため、世界で最も安全な資産とされる米国債ではなく、金の保有を増やしている。米国の政府債務が急増して数年以内に債務危機が起きるのではないかと多くの人が懸念する点を指摘し、米長期債の利回りでは十分な埋め合わせが得られないと考えている。

アッピオ氏の戦略は長期債を避けることだ。高齢化に伴う国家支出の急増によって公的債務の状況が悪化した場合、長期債は最も大きな打撃を受ける可能性がある。ブラックロックやロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメント、DWSグループなど大手運用会社も、このような環境下で顧客の資金を運用し、保護する方法を模索している。

金融市場への影響は資産クラスや地域によって異なり、万能な解決策はない。しかし世界の高齢化を念頭に置いて取引する戦略の多くは、インフレ懸念を反映している。債券を減らして株式と商品を増やすなどだ。これらが先送りできない課題であることも明らかだ。

「私たちは人口動態をゆっくりと動く列車のように考えているが、そうではない」と、MFSインベストメント・マネジメントのチーフエコノミスト兼ポートフォリオマネジャー、エリック・ワイズマン氏は語る。「それはわれわれに向かって突進してくる列車だ。よけなければ、ひかれてしまう」と述べた。

同氏は出生率が低下して人口が高齢化するのに伴い、企業は労働者の争奪戦を余儀なくされ、賃金が上昇するとみている。