最高益の三菱自動車、地域戦略で抱えるジレンマ、主力の東南アが苦戦の一方、“脇役”北米が好調

AI要約

三菱自動車工業の2024年3月期決算は、売上高と営業利益が過去最高に達したが、予想には届かず中国事業の関連損失が純益に影響。

販売台数は減少し、主要市場で台数を落としたことが課題となった。円安の効果や構造改革の成功により増益を達成。

取り組んできた合理化や構造改革の成果が現れた一方、販売面での苦労や需要の停滞が影響を与えている。

最高益の三菱自動車、地域戦略で抱えるジレンマ、主力の東南アが苦戦の一方、“脇役”北米が好調

 評価が難しい最高益だった。

 三菱自動車工業が発表した2024年3月期決算は、売上高が前期比13.5%増の2兆7895億円、営業利益は同0.2%増の1910億円だった。売上高、営業利益ともに過去最高となるが、2度目の上方修正となる昨年10月の会社予想(営業利益2000億円)には届かなかった。中国事業関連損失が膨らんだことで純益は同8.3%減となった。

 販売台数は2.3%減となる81.5万台。とりわけ、「成長ドライバー」地域と位置付けるASEANが8.8%減の23.9万台、第2の柱である「レバレッジ」地域とする中南米・中東・アフリカが9.3%減の13.6万台と、重視する市場で台数を落とした。

 「タイとインドネシアという2つの市場の需要が大きく停滞し、旧型車の売り切り、新型車の立ち上げに苦慮した」。加藤隆雄社長がそう語るように、販売面でも苦労した1年だった。

■円安の恩恵だけでなく、構造改革も結実

 そうした中、わずかとはいえ増益を確保できたのは円安の恩恵が大きい。為替による利益押し上げ効果が378億円ある。ただ、これまで取り組んできた構造改革が実を結んだことも事実だ。

 北米では、高価格SUV(スポーツ多目的車)「アウトランダー」などを軸に、過度な安売りを防ぐために販売奨励金(インセンティブ)に依存した形での販売手法を修正。日本では、ミニバン「デリカD:5」や小型車「ミラージュ」、軽EV(電気自動車)「eKクロスEV」の値上げに踏み切るなどした結果、「台当たり収益が向上している」(三菱自幹部)。

 合理化を進めてきた成果も出た。

 三菱自は、日産自動車の傘下となった2016年以降、欧州や中国などで積極的に生産能力を拡大した。しかし、計画通りには販売台数が積み上がらず、余剰生産能力を抱えて固定費負担が増加。2021年3月期には3000億円以上の最終赤字を計上した。

 加藤社長は、2021年4月の社長就任以降、縮小均衡による筋肉質な経営体質への転換を図ってきた。欧州での自社単独による新型車開発の凍結に加え、ロングセラーだったSUV「パジェロ」を生産する国内工場を閉鎖し、希望退職を募集するなど固定費を2割以上削減する合理化策を実施した。