深圳市で日本人男子児童が刺され死亡…「中国の日本人学校」の知られざる一面(姫田小夏/ジャーナリスト)

AI要約

中国広東省深圳市で日本人学校に登校中の男子児童(10)が刃物で刺されて死亡した。中国で「国恥の日」とも呼ばれる日に起きた事件で、日本人学校や子どもが狙われる背景がある。

日本人学校はグローバル化が進んでおり、国際結婚や帰化した子どもも増えている。近年、インターナショナルスクールや現地校の国際部と比較しても評価が高い。

中国全土で子どもが狙われる事件が多発しており、今回の事件も「日本人狙い」とは限らない可能性がある。一人っ子政策が続く中国社会で、復讐心から起きる犯罪も考えられる。

深圳市で日本人男子児童が刺され死亡…「中国の日本人学校」の知られざる一面(姫田小夏/ジャーナリスト)

 中国広東省深圳市で日本人学校に登校中の男子児童(10)が刃物で刺されて死亡した。許し難い事件が発生した9月18日は中国で「国恥の日」とも呼ばれ、日本への負の感情が高まりやすい時期だ。それだけに、「日本人が標的にされているのでは、と身震いしてしまう」(深圳に出張中の日本人)。

 中国では日本人学校や子どもが狙われる事件は過去にもあった。6月にも日本人の母子が襲われた。昨年8月末は福島第1原発の処理水放出を発端に、山東省など複数の日本人学校に向けて石やタマゴを投げられるなどの嫌がらせがあった。

 日本人学校といえば日本を象徴する教育機関であり、校舎や子どもが標的にされやすい。しかし、中国に20年超在住する梶田雪乃さん(仮名)は「実は日本人学校の子どもたちも変化しています」とこう話す。

「2000年代初頭まで、北京や上海の日本人学校に通うのは、両親ともに日本人の駐在員家庭の子女が多かった。けれども近年は中国名を持つ児童や生徒も少なくなく、ハーフや帰化された方のお子さんも増えています」

 男児が通っていた日本人学校は就学の条件として「日本国籍を有する者」を挙げているが、日本人と中国人の国際結婚の子女や、帰化した中国人カップルの子女らもこの条件を満たす。日本人学校とはいえ、近年はこうしたグローバル化が進み、“ボーダーレスな世界”になりつつあることがわかる。男児も日本人の父親と中国人の母親を持つ国際カップルの子どもだった。

 ちなみに日本人学校は、中国式の詰め込み教育を敬遠する親たちの間で一目置かれる存在だ。「インターナショナルスクールや現地校の国際部と比べても割安で、設備や教師の質も高い」と語る現地在住者もいる。

■子どもが標的にされる事件が多発

 今回の事件の背景は当局の発表を待つのみだが、必ずしも「日本人狙い」とは言えないかもしれない。というのも、中国全土でも子どもが犠牲になる事件が多発しているからだ。中国の学校や幼稚園で起こった主なものだけでもざっとこれだけある。

2019年 雲南省で起きた幼稚園の教師と児童への化学薬品噴射事件

2021年 広西チワン族自治区で起きた幼稚園無差別殺傷事件

2022年 河南省で起きた通り魔事件

2024年 江西省の小学校で起きた無差別襲撃事件

 一人っ子政策が続いた中国社会が最も震撼するのは最愛の子どもを失ったとき──。むしろその動機は、行き場のない犯人の復讐心からではないだろうか。

(姫田小夏/ジャーナリスト)