トランプ再選で[円高ドル安]に!? [アメリカファースト政策]が日本メーカーに与える影響って?

AI要約

円安基調が続く中、トランプ前大統領の再選で円高ドル安に向かう可能性がある。

トランプ政権の再登場により環境政策の見直しや関税引き上げが予想される。

円安ドル高の影響で日本の自動車産業への打撃が懸念されるが、日本メーカーは長期的には影響を限定的と見られる。

トランプ再選で[円高ドル安]に!? [アメリカファースト政策]が日本メーカーに与える影響って?

 ここ2年の間に円の価値がどんどん下がっている。少し前まで1ドル110円位だったのに、最近では1ドル160円と、信じられない数字となっている。そんな円安基調が続くなか、今アメリカで注目を集めている大統領選で、トランプ前大統領が再び大統領に返り咲くと一転、円高ドル安に向かうという。

※本稿は2024年8月のものです

文:井元康一郎/写真:ベストカー編集部、AdobeStock

初出:『ベストカー』2024年9月10日号

 トランプ氏が再選した場合、この4年で民主党が行った政策の多くが変更される可能性が高い。自動車業界に大きな影響を与えそうなのは環境政策の大幅見直しと、"アメリカファースト"の象徴としての輸入関税引き上げだろう。

 まずは環境政策。トランプ氏は一期目で気候変動防止のための合意である「パリ協定」から離脱し、バイデン大統領の時にパリ協定に復帰したという経緯がある。

 再び政権が共和党に移った場合、パリ協定から再度離脱するかどうかは未知数だが、パリ協定に罰則がないということを念頭に、CO2削減目標の先送り、あるいはスキームの大幅見直しを行う公算大だ。

 実はトランプ政権一期目にパリ協定から離脱したことについては、再生可能エネルギーを主軸に据えた欧州の環境規制強化に対するカウンター役をアメリカが担うことへの期待から、その判断を暗に支持する向きも少なくなかった。

 「もしトラ」が実現し、CO2削減スキームを大幅に修正することになった場合、ここ数年のEVゴリ押しのようなクルマへのCO2低減圧力は一時的に緩むだろう。

 ただしトランプ氏が大統領を務めたとしても任期は4年なので、あくまで時間的猶予が増えるという次元にとどまる。日本勢としてはEV技術が生煮えの時期にEVを大々的にやらずにすんだことが後々メリットとなって表れる公算大だ。

 トランプ政権で気になるのはむしろアメリカファースト政策。具体的には域外からの輸入に高率の関税を課するブロック経済化、およびアメリカの国際競争力を上げるための過度なドル高の是正だ。

 まず関税の引き上げについては、ロシア・ウクライナ戦争はじめ前回の政権担当時に比べて国際情勢が緊迫化していることもあって、やりやすい状況にある。

 2017年当時も当初は非常に厳しい態度を示したが、アメリカへの直接投資の申し出が増えると急速に態度を軟化させた。その点は"話のわかる大統領"であるため、心配はそれほどない。

 日本の自動車産業にとって打撃が大きいのはむしろ円高ドル安のほうだ。ドルは独歩で安くなることはあまりなく、複数の通貨を巻き添えにしながら安くなる。日本円はドルの対抗通貨なので、それらの通貨安の影響を直接受ける。利益は確実に減少する。

 ただ、現在の円安ドル高はあまりにもバランスを欠いたもので、是正された時の業績が本来の実力値だ。それに負けない体質を日本メーカーは持っているので、長期的に見れば悪影響は限定的。

 それよりはトランプ大統領の国内景気優先志向による恩恵のほうが、アメリカにある日本メーカーへのメリットは大きいものと思われる。