「入居者が管理費や修繕積立金を滞納したまま行方知れずに…」管理組合が滞納管理費を回収するための4つの方法

AI要約

集合住宅における管理費や修繕積立金の滞納について、行方不明者の費用回収方法について解説。

滞納者の財産から直接回収を目指す方法や競売を通じて区分建物を買い取る手続きについて詳細に説明。

管理費滞納は区分所有者の共同利益に反する行為とされ、競売申立を行うことで解決の道が開かれる。

「入居者が管理費や修繕積立金を滞納したまま行方知れずに…」管理組合が滞納管理費を回収するための4つの方法

 マンションや団地などの集合住宅には、管理費や修繕積立金といったお金がかかるケースも多い。そういったお金を払わないまま、入居者が行方不明になった場合、費用を回収する方法はあるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【質問】

 団地の管理組合の仕事をしていますが、管理費や修繕積立金の滞納に困っています。ある入居者はひとり暮らしで、住宅ローンが残ったまま行方不明です。遠隔地に高齢の父親がいるらしいのですが、ローンの連帯保証人かはわかりません。今後、大規模修繕の予定もあります。管理組合の立場からどう対応すればよいのでしょうか。(東京都・57才女性・会社員)

【回答】

 行方不明で交渉できない滞納管理費の回収方法としては、

【1】先取特権による競売申立

【2】支払いを命じる判決で滞納者の財産の強制競売申立

【3】住宅ローン債権者の競売手続に配当要求

【4】建物区分所有法(以下「法」)59条による競売請求

 の4つがあります。

【1】と【2】は、滞納者の財産からの直接回収を目指します。【3】【4】の狙いは競売で滞納者の区分建物を買い受けた第三者からの回収です。

【1】は、管理費などの共益費について法律上認められている先取特権という担保権に基づく競売申立です。【2】は裁判を提起し支払いを命じる判決を得て、滞納者の財産に強制執行する方法です。しかし、この先取特権は、債権回収の見込みが乏しい区分建物内の動産の競売を先行させる必要がありますし、【1】【2】で区分建物の競売を申し立てても、オーバーローンであれば、優先する住宅ローン債権者の同意がなければ手続きは取り消されます。管理費を滞納するくらいですから、余裕のある資産はないと思われ、【1】【2】は期待できません。

【3】【4】の競売の場合は、手続きが進行すると、区分建物を買い受ける第三者が登場します。法8条により「(管理費などの)債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」ので、この買受人に対して滞納組合費等の支払いを求めることができます。【3】の競売申立は住宅ローンの金融機関任せですが、【4】は管理組合が自主的に行う手続きです。

 管理費等の滞納は、法6条の定める「区分所有者の共同の利益に反する行為」で、長期滞納の結果、「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」になれば、総会で4分の3以上の決議を経て、裁判所に競売申立を認めるように請求できます(法59条)。

 なお、管理費は支払期限から5年で時効になります。どの方法でも時効を中断できますが、すぐに競売ができない場合には、管理費の支払いを命じる判決を得ておくと、時効期間を10年に延ばせます。

【プロフィール】

竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※女性セブン2024年8月22・29日号