1-8月「税金滞納(社会保険料含む)」倒産が123件に 新たな再生支援への取り組みには、金融支援がカギ

AI要約

2024年1‐8月、税金滞納を原因とした倒産が急増し、123件(前年比127.7%増)に達し、コロナ禍の特例措置が終了する中、企業の納税資金確保が難しくなっている。

政府は事業再生情報ネットワークを運用し、再生支援策を推進しているが、業績回復が遅れた企業は滞納処分により再生の道が断たれるケースもある。

滞納が続くと資産差押えや債権譲渡のリスクが高まり、企業の信用が失墜し倒産につながる可能性がある。毎月積み上がる社会保険料の滞納は特に容易ではない。

1-8月「税金滞納(社会保険料含む)」倒産が123件に 新たな再生支援への取り組みには、金融支援がカギ

 「税金滞納(社会保険料含む)」を一因とした倒産が、2024年1‐8月で合計123件(前年同期比127.7%増)と急増している。すでに、7月までに年間最多だった2018年の105件を上回り、年間200件を超える可能性も出てきた。

 政府は、2024年3月の再生支援の総合的対策を踏まえ、6月から「事業再生情報ネットワーク」の運用を開始し、公租公課の確実な納付と事業再生の両立を目指している。だが、業績回復が遅れた企業は納付原資の確保に苦心しがちで、滞納処分から資産差押えで再生の道が途絶えるケースが少なくない。

 コロナ禍で国税や地方税、社会保険料などの納付を猶予する特例措置が実施された。さらに、ゼロゼロ融資などの資金繰り支援策も加わり、企業倒産は大幅に抑制された。

 だが、コロナ禍が落ち着き、各種支援策が縮小、終了する時期に重なるように、企業は円安、原材料やエネルギー価格の高騰、人件費アップに見舞われた。このため、業績不振から抜け出せない企業を中心に、運転資金の確保に追われ納税(納付)が遅れるケースが増えている。一定期間の滞納が続くと、執行機関による財産調査の過程で、滞納が知れ渡るレピュテーションリスクに晒される。金融機関や取引先では、取引条件や取引そのものを見直すケースもあり、滞納を解消できない場合、資産の差押えや債権譲渡を実行され、期限利益の喪失が顕在化する。特に、毎月積み上がる社会保険の滞納解消は容易はでない。

 「税金滞納」倒産は、業績回復が遅れた企業を中心に、さらに倒産を押し上げる可能性もある。

※本調査は、2024年1-8月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「税金滞納」関連をまとめて集計・分析した。

 2024年1-8月の「税金滞納(社会保険料を含む)」を一因とする倒産が123件(前年同期比127.7%増)に達した。前年同期の54件の2.2倍に急増し、年間最多を更新している。

 コロナ禍の特例措置で、国税は2020年2月から2021年2月まで、社会保険料は2020年1月から2021年2月まで、それぞれ1年間の納付の猶予(無担保かつ延滞金なし)が認められた。その後、コロナ禍が落ち着くなか、納税(納付)が再開後も、円安による物価高や人件費上昇などのコストアップが資金繰りを圧迫し、納税(納付)資金を捻出できない企業は少なくない。

 税金の滞納期間が長引くと、関係機関は資産などの差押えなどの滞納処分を行う。こうした状況が発覚すると、期限利益の喪失から金融機関は一括返済を求めることもある。また、経営再建を目指す企業にとっては、金融機関や取引先の信用を失墜し、倒産に追い込まれることになる。