【岐路に立つ女子大】「内容で選ばれる大学」を目指す昭和女子大の試み 坂東眞理子・総長が構想する「新情報学部」の狙い、既存の学部とは異なるコンセプト

AI要約

名門女子大学が定員割れや入学難易度低下の苦境に立たされている中、昭和女子大学は学生のニーズに応える変革を遂げている。

昭和女子大学は、留学制度の充実や複数大学との連携により学生に選ばれる大学を目指している。

特に、テンプル大学とのダブル・ディグリー・プログラムを活用する学生もおり、2023年までで93名が2つの大学の学位を取得している。

【岐路に立つ女子大】「内容で選ばれる大学」を目指す昭和女子大の試み 坂東眞理子・総長が構想する「新情報学部」の狙い、既存の学部とは異なるコンセプト

 女子大が岐路に立たされている。名門といわれた女子大学でも、定員割れや入学難易度が低下。そんな中、昭和女子大学は学生のニーズに応える変革を行ってきた大学の一つだ。それはどのようなものか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「女子大の苦境と挑戦」。【第3回。第1回から読む】

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 1990年代、女子短大が低迷し淘汰されていったが、今、その淘汰の波が女子大に押し寄せてきている。白百合女子大やフェリス女学院大、清泉女子大、東洋英和女学院大などの名門キリスト教系女子大が定員割れをし、難関女子大として知られる津田塾大や東京女子大、日本女子大も難易度を大きく下げている。

 その理由を大手予備校の講師は「学生が行きたい学部学科が、女子大にはないから」と説明する。女子大の看板だった文学部や家政学部に受験生たちが魅力を感じなくなっている。

 一方で、津田塾大でも東京都心の千駄ヶ谷に新設された社会科学系の総合政策学部は好評で、偏差値も52.5(A方式、河合塾データ)と比較的高い。都心にキャンパスがあり、学部が社会系だと人気が上がるわけだ。このように時代のニーズにあった学部学科を新設し、志願者を集めている女子大はいくつかあり、そのひとつが東京・三軒茶屋にある昭和女子大学だ。前回に引き続き、昭和女子大の関係者へのインタビューを紹介していこう。

 昭和女子大の改革が成果をあげた要因として、「内容で選ばれる大学」を目指した点だ。大手予備校を取材していても「偏差値信仰は終焉を迎え、今は自分に合った大学を選ぶという志向が強い」と聞く。つまり、大学を内容で選ぶようになっている。そのニーズに合わせ、独自の制度を充実させている。

 その1つが留学制度だ。昭和女子大はボストンにもキャンパスがあり、そこをハブ拠点として、さらにほかの地域に留学をすることもできる。

 また、アメリカのペンシルベニア州立大学の総合大学、テンプル大学の日本校を昭和女子大の世田谷キャンパスに招聘した。このテンプル大学と教育面で連携している。

 たとえば、テンプル大学の日本校で留学前の準備のために学び、帰国後も科目履修等で語学力の維持向上ができる。

 一方で、円安で海外に行く費用が高騰しているので、留学はむずかしくなっているが、テンプル大学への「国内留学」もできる。ダブル・ディグリー・プログラムでは昭和女子大とテンプル大の2つの大学での学位が取れる。

「2つの大学で学位が取れるダブル・ディグリー・プログラムの制度を取り入れている大学は増えていますが、活用されてないケースも多いです。しかし、本学では2023年度までの実績で93名がこの制度を利用し、2つの大学の学位を取得しています。留学を含めた先進的な教育プログラムと、チャレンジしたい学生を本気で支援する面倒見の良さ、その両輪こそが昭和女子大学の強みです」(昭和女子大学アドミッション部長・松田忍教授)