「実家をセカンドハウスにしようかな」で巨額損失…気軽に相続すると大やけどする「田舎不動産」あるあるとは
実家を相続する際には、所有する土地や建物の管理に注意が必要であることが示されている。
所有者は自然災害による被害に対しても責任を問われる可能性があるため、リスクを意識する必要がある。
相続税対策のためにアパートを建てるなどの選択肢も、将来のリスクや家族の状況を考慮して検討する必要がある。
実家を相続することになった場合、何に気をつければいいのか。あす綜合法務事務所グループ代表の澤井修司さんの書籍『あるある! 田舎相続』(発売:講談社、発行:日刊現代)より、実家の相続で損害賠償を請求された事例をお届けする――。
■「相続した実家をセカンドハウスに」で泥沼化したケース
辻岡家では、母のトメが94歳で亡くなりました。長男の真也も長女の和代も都会暮らしです。そこで真也は考えました。
「実家をセカンドハウスにしようかな。裏山で山菜取ったり、シイタケを栽培したりできるし」
この考えを聞いた和代は、「実家を管理してくれるんだったら、任せたいわ」と安心して喜びました。
結局、実家と裏山は真也が、預貯金500万円は和代がそれぞれ相続することで話はまとまりました。
■裏山で大規模な土砂崩れが発生
真也は、最初のころは月に1回のペースで実家に戻って手入れをしていましたが、そのうち面倒になり、だんだん足が遠のいていきました。
実家も裏山も少しずつ荒れていきましたが、離れた都会に住む真也は気にしませんでした。
ところが数年後、大型台風が襲来。裏山で大規模な土砂崩れが起こってしまったのです。下の道路を歩いていた人が、土砂に埋もれて亡くなりました。
遺族は「安全対策を怠った」として、裏山の所有者である真也に対し、損害賠償を求める訴えを起こしたのです。
■自然災害でも土地所有者の責任が問われる可能性がある
神奈川県の逗子市で2020年、マンション敷地の斜面が崩落して、下を歩いていた高校生が犠牲になりました。
この事故をめぐって、遺族は管理会社が「安全対策を怠った」として、また、区分所有者の住人たちにも「危険な斜面に関する責任がある」などとして、管理会社と区分所有者に対して損害賠償を求めました。
マンションの区分所有者とは、1億円の損害賠償で和解しましたが、2023年に地方裁判所は管理会社側の責任を認め、賠償を命じています。
このように、自然災害による事故でも、土地所有者の責任を問われる可能性があるのです。
近年、台風や集中豪雨の被害が甚大化しています。山林や崖地を所有すること自体にリスクが潜んでいることは、意識したほうがいいでしょう。
■「相続税対策のアパート」で泥沼化したケース
野田家の自宅の土地は300坪の広さがありました。母が亡くなると、あとを追うようにその1年後、夫の正平も亡くなりました。
正平は生前、アパート建築会社の営業マンに「相続税対策になる」と言われて敷地内にアパートを建てていました。
長男の源一郎の将来が気になっていることも、正平の背中を押しました。というのも、源一郎は無職だったからです。
源一郎は大学を出て大手機械メーカーに就職しましたが、40歳のときにうつ病を発症し、紆余曲折あって退職。その後、再就職したものの長続きせず、実家に戻ってきてからは、中年引きこもりの状態が続いていたのです。
正平がアパートを建てたのは、そんな源一郎の将来を案じてのことでした。