多くの日本人が誤解している、「少子化の元凶は出生率最低の東京都である」というウソ

AI要約

東京23区に在住・勤務する女性が結婚を機に地方移住する「移住婚」への支援金構想が批判を呼んだ。

内閣官房が地方創生や地方の女性人口確保策の一環として、最大60万円を支援する制度を新設すべく関連予算を2025年度予算への盛り込みを検討していたものだ。

未婚女性に限定し、移住先での就業などの条件を課さないこの構想は「欠陥だらけ」と言わざるを得ないが、問題にすべきは事業の実効性より、むしろその狙いのほうだ。

多くの日本人が誤解している、「少子化の元凶は出生率最低の東京都である」というウソ

東京23区に在住・勤務する女性が結婚を機に地方移住する「移住婚」への支援金構想が批判を呼んだ。

内閣官房が地方創生や地方の女性人口確保策の一環として、最大60万円を支援する制度を新設すべく関連予算を2025年度予算への盛り込みを検討していたものだ。この構想がメディアを通じて明らかになるとSNSなどで「女性に限定するのはおかしい」「60万円では引っ越し代金にしかならない」などといった批判が相次いだのだ。自民党内にも否定的な声が上がり、内閣官房は予算要望の取りやめを迫られる異例の事態となった。

未婚女性に限定し、移住先での就業などの条件を課さないこの構想は「欠陥だらけ」と言わざるを得ないが、問題にすべきは事業の実効性より、むしろその狙いのほうだ。未婚女性を地方へ移住させれば、地方の出生数が増え、人口減少対策となると考えていることである。

8月2日の全国知事会で、東京一極集中が人口減少の要因となっているとした地方の知事たちの発想に通じるものがある。

地方の知事たちが主張の根拠の1つにしているのが、東京都の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子供数の推計値)の低さだ。厚生労働省の人口動態統計によれば2023年の東京都は0.99(全国平均は1.20)でしかなく、断トツの最下位である。

専門家は「超過密の東京都は住宅費や教育費が高く、子育てに向いていない」などと分析しており、こうした点を踏まえて「出生率の低い東京都に出産可能な女性が集まっているから少子化が進むのである。東京一極集中を是正しなければ、出生数減は止まらない」と訴えているのである。

これについては、島根県の丸山達也知事が全国知事会直後の8月8日の記者会見で明言している。「子育て世代と言われる年代の方々が一番集積してる地域が日本で一番出生率が低いということは、出生率を引き下げる要因になってる」と述べた。さらに、「最下位よりも1つ高いとこに行った分だけ、少しだけ出生数は増える」との持論も展開した。