高速バスが「ビジネスユース」で活性化?出張経費を削減したい企業が望む潜在的なサービスメニューとは

AI要約

2022年版「日本のバス事業」によると、2020年の高速バス事業者数は359社で、運行系統数は5113路線、年間輸送人員は9735万3000人と減少傾向にある。

コロナ禍以降、高速バス事業は苦境に立たされており、多くの路線が廃止に追い込まれている。特に高級路線はニーズが高く、人気がある。

高級夜行高速バスは、移動と宿泊を一緒にすることで合計金額を抑えられ、出張や旅行の手段として便利な選択肢となっている。

高速バスが「ビジネスユース」で活性化?出張経費を削減したい企業が望む潜在的なサービスメニューとは

 2022年版「日本のバス事業」(日本バス協会)によると、2020年の高速バス事業者数は359社、運行系統数は5113路線(各事業者の運行系統数の合計。共同運行の事業者については重複計上)、運行回数1日1万3257回、年間輸送人員は9735万3000人と公表されている。年間輸送人員は2016年の1億1574万人をピークに減少傾向にある。

 最新のデータは2020年のものだが、コロナ禍でこれが激減していったことは想像に難くない。

 2023年以降だけでも、日時順に鳥取~福岡、北九州~別府・大分、東京・新宿~広島、岡山~津山、水沢・金ヶ崎・北上~仙台、高知、高松、徳島~福井、金沢、富山などの高速バスが廃止に追い込まれている。

 コロナ禍以降、テレワークの普及、長引く不況による旅行者の減少、2024年問題による乗務員の確保難などの要因が重なり、運休や相互乗り入れで運行を打ち切る事業者も出てきている。高速バスの老舗路線として知られる大阪~福岡間のムーンライト号でさえ運休している。

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)は東京と京都・大阪方面を行き来する際、時間短縮を考慮すれば夜行高速バスも選択肢に入る。その空席探しに特徴的な傾向を見てとれる。高速バスは

「若者向けの安く寝て移動できる乗り物」

という印象が強いが、高級路線のシートは意外に埋まりやすいのだ。競争率が高いのは、関東バスと奈良交通が共同運行する

「ドリームスリーパー」(東京~大阪~奈良)

と、JRバス関東と西日本JRバスが運行する

「ドリームルリエ・プレシャスクラス」(東京~大阪)

だ。東京発関西行きのドリームスリーパーは、2017年1月に運行を開始し、7年という長きにわたって運行されている完全個室の高速バスだ。運行開始からしばらくの間は毎日運行されていたが、現在は多くの乗客が見込まれる土日や連休を中心に運行されている。

 究極の睡眠体験を提供するために設計された「ゼログラビティ(無重力)シート」は、本当によく眠れる。背もたれの角度は40度、座面の角度は30度、フットレストは水平に設置されている。

 一方、ドリームルリエ・プレシャスクラスは上級クラスで、車両によって4~6席ある。残りのスペースは3列のアドバンスクラスシートで占められている。後に導入された車両では、プレシャスクラスは6席に増席されている。これもニーズの高さを示している。

 広告では、乗客が足を伸ばしたり寝返りを打ったりできること、仕切りとカーテンで個室に近い感覚を味わえることを宣伝している。リクライニング角度が156度というのも魅力だ。

 運賃は日によってドリームスリーパーが片道1万8000円から2万円、ドリームルリエ・プレシャスクラスが片道1万3000円から2万2500円となっている。東海道新幹線のぞみの東京~新大阪間の正規料金は、普通車自由席で1万3870円、普通車指定席で1万4720円(運賃込み)である。

 コロナ禍が落ち着いて以降、インバウンド需要が高いこともあり、大都市圏のホテルは軒並み強気の価格設定をしている。そう考えると、高級路線の夜行高速バスを利用したほうが、合計金額が安くなることが多い。

 寝ている間にゆったりと移動し、朝には出張をスタートできる人にとって、高級夜行高速バスは十分な移動手段だ。