老朽化した水道管をすべて更新することが現実的なのか? 全国各地で相次ぐ水道料金の大幅値上げから読み取れる“未来へのメッセージ”

AI要約

全国で水道料金の値上げが目立ち、人口減少が深刻な地域では生活費が上昇している。水道事業だけでなく公共サービス全般に影響が及び、人口減少社会における課題を示唆している。

技術者不足や労働力の減少が公共サービスの運営に影響を及ぼし、採算割れを招く可能性が高い。人口減少対策は従来のアプローチだけでは限界があり、新たな取り組みが求められている。

水道管の更新や新技術の導入、地域に適した対策の検討が必要であり、未来に向けた投資と計画が重要とされている。

老朽化した水道管をすべて更新することが現実的なのか? 全国各地で相次ぐ水道料金の大幅値上げから読み取れる“未来へのメッセージ”

 全国で水道料金の大幅値上げの動きが目立つようになっている。とりわけ給水人口や人口密度の低い事業体ほど料金の値上げ率は高くなりやすく、全国の「水道料金格差」は2021年度の実績値8.0倍から、2046年度には20.4倍に広がる見通しだという(EY Japanと水の安全保障戦略機構事務局「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024年版)」より)。人口減少が深刻な地方ほど生活費が高くつく深刻な事態に、どう対処すればよいのか。

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 人口減少が水道事業経営に及ぼす影響は、さまざまなことを示唆している。水道に限ったことではなく、電気やガスなどすべて公共サービスに共通する課題であろう。

 利用者の先細りは長期にわたって経営体力を削いで行く。技術者不足は日常の保守点検作業すら困難にする。すでに送電線の点検をする作業員が足りず、綱渡り状態のエリアもある。人口が減少すると、停電した場合に復旧まで長時間を要することとなりそうだ。

 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の「労働力需給の推計」(2023年度版)によれば、「電気・ガス・水道・熱供給」の就業者は経済成長が進み、労働参加が進展した場合でも2022年の31万人から2040年には8万人少ない23万人になるという。

 人口が減って利用者が減れば多くの事業者は採算割れとならないよう利用者への上乗せ負担を求めるようになるが、水道事業の将来推計はまさにそのことを教えている。人口減少社会では、人口減少が著しい地域ほど生活費は高くつくようになるということだ。

 これまでの人口減少対策といえば、各地における「不足」する部分に対して、どう穴埋めするのかという政策が中心だったが、こうした「現状」を前提とした発想や手法では長くは続かない。

 人口が激減してしまった未来を見通したとき、老朽化した水道管をすべて更新することが現実的なのかが問われているのだ。それはすべての公共サービスにも言えることである。

 水道管を更新する一方で、例えば雨水を飲料水に変える装置を技術進歩させ、多くの世帯が手ごろな価格で利用できるようにするといった取り組みも必要になってくるだろう。いくつもの選択肢を組み合わせ、それぞれの地域の未来に適した対策を考えることが求められる。

 全国各地で相次ぐ水道料金の大幅値上げから“未来へのメッセージ”を読み解かなければならない。

【プロフィール】

河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。