R32GT-Rは300馬力でATもあった!? 歴代スカイラインGT-R開発責任者3人が語る「今だから話せる秘話」【リバイバルBESTCAR】

AI要約

東京モーターショーでR35GT-Rプロトタイプが登場した際に、ハコスカ4ドアGT-R、ハコスカ2ドアGT-R、ケンメリGT-Rの開発秘話が語られた。

ハコスカ2ドアGT-Rは、開発段階でホイールベースの短縮が行われ、元々の4ドアから2ドアになった経緯が紹介された。

開発者たちはスカイラインの走りの性能を追求し、ケンメリGT-RとハコスカGT-Rは異なるフィロソフィを持つクルマとして比較された。

R32GT-Rは300馬力でATもあった!? 歴代スカイラインGT-R開発責任者3人が語る「今だから話せる秘話」【リバイバルBESTCAR】

 R35GT-Rプロトタイプが登場した2005年9月の東京モーターショー。その登場を記念してベストカー2005年12月10日号では渾身のGT-R特集を組んだ。ここではハコスカ4ドアGT-R、ハコスカ2ドアGT-R、ケンメリGT-Rの開発主管櫻井眞一郎氏。R32GT-Rの開発主管伊藤修令氏、そしてR33GT-R、R34GT-Rの商品主管渡遅衡三氏の3氏にいまだからこそ話せる秘話を、2005年11月頃に取材して記事化した内容をお届けしよう。

 文まとめ:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部、日産

 

●KPGC10は2ドアじゃない。ショートホイールベースだ

 まずはスカイラインの父、ミスタースカイラインと言われた櫻井眞一郎氏。

 ハコスカというのはちょうどプリンスと日産が合併した時に開発中だったんです。試作車まで出来上がってましてこれが実にいい具合でした。いっぽう、日産ではブルーバード(510)が開発中でした。

 そこで、両者で話し合いをして、ブルーバードはファミリーセダンとして世に出すことになりました。その結果、私たちのスカイラインは徹底的に走りの性能を追求しようということで作りました。

 スカイラインというのは、あくまで運動性能の優れたセダンであり、4ドアなんです。ですから、ハコスカ2ドアGT-Rも4ドアがベースなんです。

 しかし、私たちが理想とする走りを追求していくと、ホイールベースを短くする必要があった。そこで、レギュレーション上許される後席スペースが確保できる、ギリギリのホイールベースまで切り詰めたんですね。そうしたら2ドアになっちゃったんですよ。

 

●ケンメリは商品、ハコスカは作品、両車は対極に位置する

 ハコスカは自分たちの作りたいスカイラインを作ったんです。おかげさまで外の評価は物凄い高いものでした。しかし、昨日免許を取った初心者や女性には乗れるクルマではないとずいぶん言われました。

 特にプリンス系の販売店からはもっと売りやすいクルマをいう要望が強かったですね。合併直後でしたから販売店としても主力のスカイラインをもっとうりたかったんでしょう。

 そこで4代目のケンメリは「よし、わかった」と売れるクルマを作ったわけです。技術屋としては不本意でしたが。結果は、ご存じのとおり、歴代スカイラインのなかで一番売れてしまいました。

 ハコスカGT-Rは走りというものを徹底的に追求しました。ケンメリGT-Rは商品としてのクルマを徹底的に追求したクルマがべ―スなのでハコスカとはフィロソフィが違うんです。

 ●教科書は自然の摂理。4WDもABSもHICASも馬がヒントになった.

 クルマというのは、4つのタイヤで動くものです.だから私は、クルマというのは動物の動きから学ぶべきだと思っているのです。馬事公苑によく行きましてね。馬の走りというか動きを研究しました。

 私が後輪駆動にこだわったのもそこなんです。馬は、走る時に後ろ足で強く蹴りだします。だから、クルマも後輪で蹴りだすべきと。しかし、ある時、馬が走る時は前足も上手く使っていることに気づきました。

 そこで、後輪駆動ベースの4WDを思いついたのです。DR30スカイラインを開発している時でした。開発には時間がかかり、採用できたのは8代目のR32スカイラインからです。

 ABSも同じです。馬事公苑で障害物を越える時の馬を見ていた時です。障害物の手前で急制動をかける時、馬は4つの足で微妙に姿勢をコントロールするんです。それでABSを思いついたんです。HICASは競馬場の馬でした。競馬場のコーナーを走るとき、馬は後足も前足と同位相で蹴りだしているんです。

 それでHAICASは同位相になったんですね。クルマ作りっていうのは神が創った自然の法則に学ぶべきだと思います。