単なる「ラーメン店主のワガママ」ではない…炎上覚悟で飲食店が「イヤホン・スマホ禁止」にする本当の理由

AI要約

飲食店の独自ルールについて、なぜ店側がそれを設けるのかについて説明されています。飲食店の独自ルールに関わるトラブルや議論も取り上げられており、そのルールの種類や例も述べられています。

飲食店の独自ルールには利用人数、メニュー変更、注文点数、注文方法・食べ方、支払い、キャンセル料などさまざまなものがあり、それぞれのルールが顧客と店側の間で揉め事を引き起こすこともあることが紹介されています。

飲食店は食品衛生法を遵守する必要がありつつも、オリジナルなルールを設けることで自由度が高く、独自の特徴を出すことができることが述べられています。

「食事中のスマホ使用禁止」など、飲食店の独自ルールをめぐるトラブルは絶えない。それでも店側がルールを設けるのはなぜなのか。グルメジャーナリストの東龍さんは「競争が激しい外食産業で生き残るために、自衛手段としてルールを設けている店が多い。理不尽に思える『スマホ使用禁止』にも理屈はある」という――。

■「店内でイヤホンやめて」でラーメン店が炎上

 今年7月、東京都内の人気ラーメン店がXに「店内でイヤホンをつけるのをやめてほしい」と投稿したことを発端に、飲食店の“独自ルール”をめぐる議論が盛り上がった。

 昔から口うるさい飲食店は多く、各店がそれぞれにルールやマナーを設定するのは今に始まったことではない。ただ、誰もが発信できるSNSの時代になってから、そうした決め事に対する反発や不満が表出するようになった。理解を示す向きもあるが、どちらかといえば反対派のほうが多いようだ。中には「そういった店には絶対に行きたくない」という主張も散見される。

 総務省が定める「日本標準産業分類」の定義によれば、飲食店とは「主として注文により直ちにその場所で料理、その他の食料品又は飲料を飲食させる事業所」。飲食店を営業するのに主に必要となるのは、食品衛生責任者と防火管理者を置き、管轄地域の保健所から飲食店営業許可を取ることだ。ちなみに、よく勘違いされているが、調理師免許の取得は必須ではない。

 つまり、食品衛生法は遵守しなければならないが、それ以外については自由度が高く、オリジナルのルールが創出可能なのだ。それゆえに、運営者の暴走にも見えるようなルールが制定され、さまざまな角度から炎上が起きやすいといえるだろう。

■「一人客お断り」「1人グラス3杯」…揉めがちなルールの代表例

 トラブルになりがちな独自ルールにはどんなものがあるか。いくつかに分類してみよう。

 ●利用人数

 これだけ「おひとりさま」が定着した現在でも、1人で利用できない店は多い。2人で分けることが前提のボリュームになっていたり、テーブルの稼働率を上げたりするためだ。

 ●メニュー変更

 “おまかせコース”一択の店の中には、アレルギーや好き嫌いといった特別対応を全く受け付けないところがある。食材の変更や別メニューの提供がされなければ客は必然的に該当料理をパスするわけだが、その分の値段は割り引かれないことが大半だ。

 ●注文点数

 1人1品以上の料理を必須としたり、1ドリンクを求められたりする店は多い。それでいて、居酒屋を中心に、有料のお通しが勝手に提供されることも根強い議論の種だ。お酒を売りにした店であったり店主がお酒好きであったりすれば、「2人でボトル1本以上」「1人グラス3杯程度」など、それなりの分量のアルコールの消費が定められている場合もある。

 ●注文方法・食べ方

 ある有名ラーメン店のグループでは、トッピングやボリュームなどのオプションも含めた呪文のようなオーダーを唱えなければならないことがよく知られている。

 一方、ファインダイニングでは、数品が同時に提供されて指定された順番通り食したり、途中でトッピングやコンディメント(調味料)を加えたりと、“最善の喫食方法”を半ば強要されることもある。「好きに食べさせろ」と思う人はいるだろう。

 ●支払い

 クレジットカードやQRなどのキャッシュレス決済に関して、独自ルールを設ける店が増えている。「ランチでは使用不可」「5000円以上の支払いのみ対応」「手数料10%上乗せ」といった、本来は決済サービス会社の規約で禁止されているはずの運用をしていれば客は不満を抱く。

 さらに極端なケースだと、最低3万円を超えるような高価格帯であるにもかかわらず、頑として現金しか対応していない“吝嗇なラグジュアリーレストラン”も存在する。そうした店は顧客層からも敬遠されがちだ。

 ●キャンセル料

 飲食店はハコもの商売なので、その時その席に客が入らなければ売上機会を逸してしまう。したがって、ノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)に対して、キャンセル料をとることは珍しくない。通常であれば3日程度前から、長い場合には1週間前くらいから、キャンセルポリシーに従ってキャンセル料が請求される。

 しかし、超がつくような予約困難店にもなると、1カ月前あるいは予約した瞬間からペナルティーが発生することがある。そのタイミングでのキャンセルによってどれだけ被害が生じているのか、客側としては疑問だろう。後述する通り、そうした店の顧客層は限られるため炎上にまで発展することはめったにないが、かなり慎重になって予約せざるを得ず、評判が悪い。