社会人のマナーに「こんなの常識でしょ?」と考える大人世代に若者たちが感じる不満 「それって明文化されてましたっけ?」

AI要約

若者と大人の間には「まじめ」に対する認識のズレがあり、これが無理解を生むことがある。

若者は明文化されたルールには従うが、大人は暗黙の常識に従いがちであり、これが衝突を引き起こすことがある。

折り合いをつけるためには、ルールを明確に定めて遵守し、一貫性を持って対応することが大切である。

社会人のマナーに「こんなの常識でしょ?」と考える大人世代に若者たちが感じる不満 「それって明文化されてましたっけ?」

 公共の場でも会社内でも、大人世代にとっての常識が、若者に通用しないシーンは少なくない。そんなとき、若者を大人は「ふまじめ」と決めつけてしまいがちだが、若者が取った言動には、しっかりとした理由がある。金沢大学教授・東京大学客員教授の金間大介さんは、そこには「まじめ」に対する認識に大きなズレがあると指摘する。大人は若者の言動をどう受け止めればいいのか。

「まじめで素直」という若者の心理的特徴を「いい子症候群」と定義した金間さんは、“まじめな大人たち”をどう見ているのだろうか。

「“ルールを守る”という視点でいえば、多くの大人はまじめではないと思います」(金間さん・以下同)

 代表的な例が、エスカレーターのルールだという。

 各鉄道会社では、数年前から「エスカレーターは2列で乗ってください」とポスターや貼り紙で告知をしている。法律ではないが、明文化されたルールだ。

「でも現実は、歩く人用に右側(地域によっては左側)を空ける“暗黙のルール”がまかり通っていますよね。安全上歩かないでください、と言われているのに、です。

 まじめな若者は合理的なので、明文化されたルールには『決まりだから』と抵抗なく従います。だから、エスカレーターに1列で乗る大人たちを、ちょっと引いた目で見ているのが現状です。

 一方、50代以上の大人たちは『みんながそうしているのだからそうすべき』という暗黙の常識や同調圧力に従うのが、まじめだと思っている。若者と大人世代では、まじめに対する認識に大きなズレがあるということです」

 職場を例にとってみよう。大人が「これがまじめな社会人のマナー」と考えるのが、以下の行動だ。

●メールの文頭に「○○様」や「お世話になっております」をつける

●若い社員が率先して電話に出る

●若い社員から先に挨拶をする……

「50代以上の人なら『皆これまでやってきたことだし、こんなの常識でしょ?』と考えるでしょう。ところが、若手としては『それって明文化されていましたっけ? 一つひとつお願いされてもいないのに、やらなかったらふまじめだと思われるのはおかしい』というのが本音です」

 若者は大人を「ルールは守らないのに暗黙の常識に従わせようとする」と感じ、大人は常識に従わない若者を「ふまじめだ」と断じる。いったい、どうすれば折り合いがつくのか?

「大事なことはルール化し、シビアに遵守しましょう。それが公平でまじめな振る舞いだと思います。

 部署内やグループ内の小さな決めごとでも、“こうする”と決めたら明文化して全員に周知し、やらなかった人に対してはしっかり注意する。若い人は、ルールだと納得すれば、気持ちよく従うはずです。

『言わなくてもわかるだろう』とか、人によって対応を変えるといった一貫しない態度がいちばんダメです」

 ルールに関しては、若者の方が合理的でまじめだったのだ。