カスタム車を売る「光岡自動車」はなぜトヨタやホンダと同じ自動車メーカー? 「自動車メーカー」の基準はドコにあるのか

AI要約

自動車メーカーにとって重要な型式指定に関する説明。

光岡自動車が型式指定を手にするまでの経緯。

型式指定取り消し処分を受けた自動車メーカーの問題点と今後の課題。

カスタム車を売る「光岡自動車」はなぜトヨタやホンダと同じ自動車メーカー? 「自動車メーカー」の基準はドコにあるのか

 自動車メーカーである証として、型式指定がある。

 型式指定とは、自動車メーカーなどが生産や販売を行う上で、あらかじめ国土交通省へ申請または届出を行うことにより、保安基準への適合などの審査を受け、適合すれば「型式指定」または「届け出制度」の認可を得る。

こうして、一台の新車が誕生したとき、以後、納車する一台ごとに車検を受けな くてもナンバープレートを交付してもらえるようになる。クルマを開発・製造し、それを数多く販売することで成り立つ自動車事業であるからこそ、この型式指定を手にすることが成長への第一歩となる。

 日本には、10の自動車メーカーがある。そのひとつが、光岡自動車だ。

 光岡自動車というと、ほかの自動車メーカーが製造した乗用車の一部を変更する(カスタマイズ)などで新たな魅力を創出する企業との印象が強いかもしれない。しかしじつは、1996年にゼロワンという自社独自のふたり乗りオープンスポーツカーを売り出し、このとき、型式指定を手にした。

 そして、ホンダ(ホンダ技研工業)に次ぐ10番目の自動車メーカーとして32年ぶりにその地位を得た。

 型式認定制度を通じ、型式指定を受けることは、自動車メーカーの根幹となることである。それにもかかわらず、昨今、国内の6社(トヨタ、ダイハツ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ)が型式指定の取り消し処分を受ける不祥事を起こした。

 安全に問題はなく、所有者は使い続けて差し支えないという。だが、法令違反を犯したことに間違いない。自動車メーカーとしての根幹を、自ら手放す行為に手を染めたのだ。

 いっぽうで、国の基準の在り方にも課題があるとの声がある。それであるなら、是正する努力をするのが、自動車業界を代表する団体である自動車工業会のひとつの責務ではないだろうか。

 かつて、官民の贈収賄事件などが明るみに出て、管轄官庁と民間企業の交流が途絶えがちになっている。かといって最新技術の情報や現状を、管轄官庁が把握できていない事態も問題だ。役所からの問い合わせに対し、企業秘密の観点から情報を提供しない姿勢も見受けられるようだ。

 互いの意思疎通の欠如が、今回の不祥事の背景としてひとつ考えられる。しかし、いずれにしても法令違反に弁解の余地はない。

 型式指定が取り消されれば、自動車メーカーとしての存続が危ぶまれるのである。クルマは、住宅の次に高価な商品といわれてきた。その価格的価値に対する消費者への責任感が、経営者と現場の双方に薄れていたのではないか。販売を再開する前に、自らを省みる姿を、ときをかけて具体的に世に見せるべきだろう。それが、自動車メーカーとしての第一歩になる。