投資信託は純資産総額の大きなファンドを選ぶのがいい?

AI要約

投資信託の純資産総額が大きいほど良いとされる理由について説明されています。分散投資や解約時の影響軽減、繰上償還リスクの回避などが挙げられています。

ただし、ファンドの投資先によって適正な市場規模が異なるため、純資産総額が必ずしも大きいほど良いとは限らないことが説明されています。

具体例として、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)ファンドの増額について言及し、適正な資金規模を考慮する必要性が示されています。

投資信託は純資産総額の大きなファンドを選ぶのがいい?

「投資信託を買う時は、純資産総額の大きなファンドを選ぶようにしましょう」と言われます。ある意味、正しいのですが、何にも適正水準というものがあります。それは投資信託も例外ではありません。

投資信託の純資産総額とは、ファンドに組み入れられている株式や債券などの時価総額を合計したものです。したがって、組入資産の値動きと、資金の流出入によって、純資産総額は変動します。

つまり、純資産総額はファンドの規模を示すのですが、基本的にその額は大きいほど良いと言われています。純資産総額の規模が大きいほど良いとされる理由は、いくつか考えられます。

まず、より多くの資産、銘柄に分散投資できることです。運用に回せる資産の額が大きいのですから、運用方針に合致した範囲内でさまざまな資産クラス、銘柄にポートフォリオの中身を分散できます。

次に多少の解約が生じたとしても、運用のクオリティを維持できることです。純資産総額が10億円しかないファンドで5億円の解約が生じたら、ポートフォリオの半分を崩さなければなりませんが、純資産総額が1000億円あれば、5億円の解約などポートフォリオのごく一部を取り崩すだけで対応できます。

そして、繰上償還リスクが無くなることも、純資産総額が大きいことのメリットです。投資信託には「繰上償還条項」があらかじめ決められていて、受益権口数の残存額が一定水準を下回ると、償還日まで期間が残っていたとしても、その時点の基準価額で償還されることがあります。繰上償還されると、長期投資を前提にして購入したファンドも、それ以上の運用はできなくなりますから、一定の純資産総額を持ったファンドを選んだ方が無難、ということになります。

しかし、純資産総額が大きければ大きいほど良い、というのは明らかに間違いです。なぜなら、ファンドの投資先によって適正な市場規模があるからです。

先日、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が、信託金の上限額をそれまでの5兆円から20兆円に引き上げました。実は2024年の1月19日に、それ以前の2兆円から5兆円に引き上げたばかりで、それから半年で20兆円に引き上げたのですから、人気の高さが伺われます。

なぜ、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は信託金の上限を20兆円にまで引き上げることができるのかというと、それだけの資金を吸収できる資産に投資しているからです。何しろ全世界の株式市場を投資対象にしている投資信託ですから、運用資産の規模が20兆円になったとしても、十分に運用できると考えているのでしょう。

対して、日本の中小型株式を中心に組み入れて運用するファンドになると、20兆円もの資金が集まったら、ほとんど運用できなくなります。なぜなら中小型株は時価総額自体が小さいことに加え、株式市場での売買も総じて少ないからです。