【現地レポ】アジア最大のAIイベントで注目、次に来る「分散型AI」のヤバさとは?

AI要約

アジア最大のAIイベント「SuperAI」がシンガポールで開催され、分散型コンピューティングに関するセッションが注目を集めた。

分散型AI技術は、ブロックチェーンを通じて中央集権化に対抗し、分散型インフラの構築に取り組んでいる。

分散AI技術の進化には、新たなブロックチェーンシステムや小型言語モデルの研究、具体的なユースケースの増加が必要だ。

【現地レポ】アジア最大のAIイベントで注目、次に来る「分散型AI」のヤバさとは?

 アジア最大のAIイベント「SuperAI」がシンガポールで開催された。イベントの中で注目を集めたのが、分散型コンピューティングに関するセッションだ。次世代のAIを支える技術として期待されている同技術だが、現在、AIとの融合についてはどのような取り組みが行われているのだろうか。セッションの様子とともに、分散技術を活用したAI開発に取り組むパイオニア企業の動向も紹介しよう。

 今年6月、シンガポールのマリーナベイ・サンズにて、アジア最大のAIイベント「SuperAI」が2日間にわたり開催された。世界中から5000人以上が参加、AI業界のリーディングカンパニーが一堂に会するこのイベントでは、大規模言語モデルの進化や生成AI、ロボティクス、分散型AI、規制と倫理などのホットトピックが議論された。

 注目セッションの1つが「Decentralized Intelligence: The Vision for Universal AI」だ。分散型コンピューティングとAIの融合というテーマのもと、AI企業Fetch.aiの創業者兼CEOのフマユン・シェイク氏、ゲーム領域を専門とする分散型AI企業Virtual Protocolの創業者ジャンセン・タン氏らが登壇し、ユニバーサルなAIを実現するための分散型インテリジェンスのビジョンについて議論を交わした。

 分散型AIは、ブロックチェーンを通じて、AIの民主化と中央集権化されたテック大手企業への対抗力となることが期待されている分野だ。しかし一方で、大規模言語モデルのトレーニングには膨大なGPUリソースと複雑なコンピューティングの仕組みが要求されるため、分散化への道のりは容易ではない。

 この難題に取り組む1つのアプローチが、AIのインファレンス(推論)フェーズに特化した分散型インフラの構築である。

 大規模言語モデルの事前トレーニングやファインチューニングには、何百、何千ものGPUを高速バスで結合した集中型のアーキテクチャーが不可欠だが、トレーニング済みのモデルを使った推論であれば、分散型のWeb3インフラ上でも実現可能だというのが、分散型AIの有力な適用領域として浮上している。

 ただし、現行のブロックチェーン基盤は大規模言語モデルを動かすようには設計されていないのが実情で、より複雑で大規模なワークロードに最適化された新しいブロックチェーンシステムの登場が待たれる。また同時に、マイクロソフトが提唱する「小型言語モデル」のように、高度に特化することで小型化した基盤モデルの研究も、分散型AIを後押しする動きになると期待される。

 分散型生成AIの実現には多くの障壁が立ちはだかるが、オープンソースの生成AIモデルの主流化、推論特化型のユースケース、Web3インフラの大幅なスケールアップ、より小型で適応性の高い基盤モデルの開発など、着実に前進するいくつかの潮流が、分散化と中央集権化のバランスを変えていく可能性を秘めている。

 こうした現状を踏まえ、セッションの登壇者らは、この領域がさらに前進するには、実際にこれらのテクノロジーを活用するユースケースが増えることが必須であるとの見解を示した。今後具体的なユースケースの取り組みが増えてくるものと思われる。