書店主導で「売れる本」を売る 返品減らし利益高める改革に着手

AI要約

紙の本の売り上げがピークから6割減少し、書店業界は厳しい状況にある。

業界大手の紀伊国屋書店などが書店側の利益率を上げ、返品を減らす取り組みを始めている。

出版流通の改革が書店主導で進められ、新たな売り上げ増加策が試みられている。

書店主導で「売れる本」を売る 返品減らし利益高める改革に着手

紙の本の売り上げがピーク時から6割減となる苦境下で、街中の書店を残すための取り組みが本格化している。業界大手の紀伊国屋書店などは書店側の利益率を上げる「売れる本」を多く仕入れて返品を減らす仕組みづくりに着手した。既存の流通システムが曲がり角を迎えつつある中、書店主導での改革が進められている。

■売り上げ前年比2割増

紀伊国屋書店と蔦屋書店などを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、出版取次大手の日本出版販売(日販)の3社は昨年、合弁会社「ブックセラーズ&カンパニー」を設立した。ブックセラーズ&カンパニーは、出版社と直接仕入れ数や価格を交渉し「売れる本」を多く仕入れる。参加書店は返品時の物流費を負担するが、取り分も増える仕組みだ。

今年6月時点で、徳間書店など出版社6社が参加。紀伊国屋とCCC系列の書店計399店の同月の店頭売り上げは前年比119・4%、粗利率も30・8%を確保したという。

日本の出版流通の主流となっている委託販売制度では、出版社が取次会社を通じて書店に本の販売を委託する。書店側は一定期間内であれば自由に本を返品できるため売れ残りの在庫を抱えるリスクはないが、販売時の粗利率は低い。薄利多売のモデルだ。しかし出版不況下で約4割と高止まりしている返品率が書店・取次・出版各社の経営を圧迫。本を配送する取次には物流費の高騰も重くのしかかる。

■目立つ紙の雑誌落ち込み

出版科学研究所によると、少子高齢化やインターネットの普及などの影響で、紙の出版物(書籍と雑誌)の推定販売額はピーク時の平成8年の2兆6564億円から減少の一途をたどり、昨年は1兆612億円と4割以下に落ち込んだ。電子コミックの販売額が伸びる一方で、紙の雑誌の落ち込みが目立ち書店の経営難に拍車をかけている。

日本出版インフラセンターの調べでは全国の総書店数は平成25年度の1万5602店から昨年度には1万918店と3分の2に減った。ブックセラーズ&カンパニーの宮城剛高社長は「委託販売制度は本が売れる時代にはよかったが、今では制度疲労を起こしている。大手がリスクを負って改革しないといけない」と話す。

出版流通に詳しい上智大の柴野京子教授は「本の返品率を下げる取り組みは繰り返されてきたが、テストの範囲で終わってしまっていた。どれくらいの出版社が参加するかが成否を分けるカギになる」と指摘する。