【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…8月第2週の「米国経済」の動き

AI要約

米国の7月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月より減少し、失業率が上昇。パウエルFRB議長も労働市場の減速を懸念し、景気後退リスクに警戒姿勢を示している。

労働市場の減少ペースが加速したことで、金融市場では米国の景気後退入りを懸念する声が高まっている。過去のデータからも景気後退の初期兆候として失業率の上昇は注意されている。

サーム・ルールによると、失業率の急上昇がある場合、景気後退が始まる可能性が高い。今回のデータでは、景気後退への不安がさらに高まる状況となっている。

【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…8月第2週の「米国経済」の動き

不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。

米労働省が公表した2024年7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は、前月差+11.4万人と、6月(同+17.9万人)、市場予想(同+17.5万人)ともに下回りました(図表1)。

今回の雇用統計には、テキサス州に直撃したハリケーン(ベリル)の影響が含まれているものの、米労働省は、労働市場への影響は軽微とコメントしており、雇用鈍化の主因はハリケーン以外によるものとみられます。

非農業部門雇用者数(増加ペース)の内訳をみると、⺠間部門は6月の前月差+13.6万人から7月に同+9.7万人へ減速し、2023年平均(同+19.2万人)を大幅に下回りました(図表2)。

また、政府部門については、7月に前月差+1.7万人と、6月の同+4.3万人から増勢が鈍化しました。

7月の失業率(家計調査)は4.3%と、6月(4.1%)から横ばいとの市場予想に対して、大きく上昇しました。6月にFOMCが公表した、2024年末の見通し(4.0%)や均衡と位置付けられる4.2%を上回り、労働市場がFOMC参加者の想定より早いペースで、減速していることになります。

7月FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議⻑は「肝心なのは、労働市場がより急激に悪化することを心配しているのかということだ。急減の兆しは注視している」と発言しました。インフレ抑制に注力してきたFRBが、労働市場の軟化にも配慮した姿勢にシフトした背景には、パウエルFRB議⻑が労働市場が減速しすぎて、景気後退に陥るリスクを懸念しているためと考えられます。

サーム・ルールでは、失業率の過去12ヵ月の最低値に対して、直近3ヵ月平均が0.5%上昇したときに、景気後退が始まるとされます。7月は失業率が4.3%へ上昇したことで、サーム・ルールに基づく数値は0.53%と、6月(0.43%)から上昇し、景気後退を示唆する水準に達しました(図表3)。

同ルールを提唱した元FRBエコノミストのクラウディア・サーム氏は、7月の雇用統計で失業率が予想外に上昇したことについて、「失業率のこうした上昇は、過去においては景気後退の初期と整合的だった」としたうえで、景気後退に「不快なほど近づきつつある」と述べました。

7月の失業率がサーム・ルールに抵触したことで、金融市場では、米国の景気後退入りを懸念する向きが強まっています(図表4)。