竹が過疎地を救う? 「竹害」を「竹益」に 大分大学教授の挑戦

AI要約

竹の過剰な生育が地域社会に影響を及ぼしていることに着目し、竹から「次世代の素材」と期待される「セルロースナノファイバー」を抽出する技術を開発した衣本太郎さん。

竹の過剰生育がもたらす環境、社会構造の変化への影響を竹を利用することで解決につなげるための研究を始め、竹からセルロースナノファイバーを開発。

研究を始めるきっかけや現場での実地調査、地元とのコミュニケーションを通じて竹林管理の現状や課題を理解し、地域社会への貢献を目指している。

竹が過疎地を救う? 「竹害」を「竹益」に 大分大学教授の挑戦

竹の過剰な生育が地域社会に影響を及ぼしていることに着目し、竹から「次世代の素材」と期待される「セルロースナノファイバー」を抽出する技術を開発した衣本太郎さん。大分大学理工学部の教授として研究に取り組み、おおいたCELEENA(セレーナ)の代表取締役としても環境問題の解決と持続可能な資源の活用に取り組む。研究のきっかけから技術開発の過程、そして地域社会への貢献について聞いた。(聞き手 SDGs ACTION!編集部・池田美樹)

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衣本太郎(きぬもと・たろう)

京都大学大学院博士後期課程修了。博士(工学)。専門は化学。特にSDGsの達成とイノベーションの創出を目標に、電気化学・機能物質化学・無機材料化学を基盤とし、燃料電池・電池・グリーン水素製造・竹の素材化開発などの研究に取り組んでいる。大分大学理工学部附属先端技術・GX研究センター副センター長や減災・復興デザイン教育研究センターのほか、大分県環境審議会、大分市水素利活用協議会や地球温暖化対策おおいた市民会議の委員としても活動している。

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――竹からセルロースナノファイバーを抽出する技術に着目したきっかけや課題意識について教えてください。

私は大阪出身ですが、大学は京都で学び、その後、大分に赴任しました。その際、竹林が管理されずに放置されることで、倒れて道路や鉄路を塞いだり、住宅に倒れかかったりする状況を多く目にし、その危険性や環境問題に対する課題意識が芽生えました。

調べてみると、「竹害」という言葉があり、地域の高齢過疎化と関連していることもわかってきました。また、竹は非常に成長が速く、一度放置されると他の植物を圧倒し、生態系のバランスを崩す原因にもなります。これらの問題を見聞きして、解決できないかと考えるようになったのです。

そこで竹の過剰生育がもたらす自然環境、社会構造の変化への影響を、竹を活用することで抑制し、解決につなげるための研究を始めました。これが、竹からセルロースナノファイバーと呼ばれる次世代の素材を抽出する技術を開発するきっかけとなりました。

私たちが竹から抽出したセルロースナノファイバーは「CELEENA®」と名付け、登録商標として会社名の一部にもなっています。

――どのように研究を始めましたか。

大学構内の竹を自ら切り出して観察することから始めました。竹の構造とその特徴について調べ、自身で開発できる竹の新しい利用法を考えました。同時に、地域の竹林を訪れ、地元の人々と対話を重ねることで、竹林管理の現状や課題をより深く理解することができました。

環境問題や地域社会の課題解決においては、実際の現場での問題を直視することで、具体的な解決策が見えてきます。研究を机上のみで進めるのではなく、現地でのフィールドワークや関係する人々とコミュニケーションを取ることは不可欠で、新しい知見が得られ、自身の研究にフィードバックできたと感じています。

今も大分県豊後大野市長谷地区の「ながたに振興協議会」と連携して、竹林の管理や集落の活性化について意見交換しています。