オウム返しは「感じが悪い」…「温かみのある聞き手」が実践している「3つのトークスキル」

AI要約

コミュニケーションにおいてオウム返しは重要だが、機械的に行うべきではない。

相手の話を受け止める際にはタイミングや声の大きさに気をつける必要がある。

周りに他人がいる場面ではオウム返しよりも、関心を持って受け止める反応を心がけるべき。

オウム返しは「感じが悪い」…「温かみのある聞き手」が実践している「3つのトークスキル」

「会話中にうまいことが言えない」「会話が続かない」「ついしゃべりすぎてしまう」――こういった悩みは、“他人にいい印象を与えよう”とする欲求から生まれてくるのだとか。そんなプレッシャーから解放される方法について、コミュニケーションコンサルタントの吉原珠央氏の著書『シンプルだからうまくいく会話のデザイン』より、内容を一部抜粋してお届けいたします。

以前、カフェで、私の前に並んでいた女性の顔をのぞき込んだ別の女性が、「○○さん、お久しぶり!」と、声をかけている場面を見かけました。

顔を覗き込んでいた女性は続けて「ねえ、そういえば、お子さんは今、どちらの学校に通っているの?」と、私の前にいた女性に質問しているのが聞こえてきました。

周囲には数人のお客さんがいたこともあり、あえて小さな声で、学校名を答えていた女性に対して、「□□ちゃんと、△△くんは、○○に通っているのね」と、質問した女性が、子供たちの名前と学校名を、大きな声でオウム返ししたのです。そして一瞬にして、個人情報が店内に知れ渡ってしまったのです。

「子供のことぐらいで」と、世の中には、気にしない方もいらっしゃるでしょうが、私の前に並んでいた女性は、明らかに困惑した様子でした。

というのも、学校名というのは、公立校であれば学区がわかり、住まいも特定できますし、私立であれば、住まいまでは特定できないまでも、わざわざ知らない人たちに個人情報を知られるメリットは何ひとつありません。

個人情報については、「気にしている人もいる」という前提で会話をする気配りの大切さを、身をもって体験したのでした。

さて、オウム返しというのは、コミュニケーションの中でも「良い聞き方」の一例として紹介されることがあります。1930年代以降、カウンセリングでクライアント中心療法を発案し、アメリカの臨床心理学者であったカール・ロジャーズ氏が示している「カウンセリング技法」の中でも、オウム返しのように、相手の話したことを繰り返すことは、意思決定が尊重される手法のひとつとして紹介されています。

私自身、オウム返しは情報を正確に理解しているかどうかの確認にもなるため、普段の会話中に使用することもしばしばです。

一方で、それを使用する際の基本としては、頻度やタイミングはもちろんのこと、状況に応じた声の大きさに気をつけることも求められます。

そもそも、相手の話したことをオウム返しすることは、手段であり目的ではありません。

相手の話をどのように受け止めるのが最適か、その都度、さまざまな方法の選択肢の中から瞬時に適した判断をする必要があります。

また、オウム返しというと、簡単で単純な反応のように思われがちですが、だからこそ、機械的に言葉を発するだけになってしまわないよう、そのタイミング、さらには声の大きさや丁寧さ(抑揚や発声のスピードなど)などにも気をつけたいものです。単に相手が発したことと、同じことを繰り返せば良いわけではありません。

言うまでもないことですが、相談相手に対して、「悩んでいるということですね」「つ

らいということですね」などと、他人事のように繰り返しても意味がないことですし、頻繁にオウム返しをするのは、耳障りにもなりかねません。

「必ず、オウム返しをしなくては」と、意気込む必要はなく、その瞬間の、相手との空気感や、会話の流れなどに合わせながら反応をするほうが自然です。

ですから、周りに他人がいるときの会話では、あえてオウム返しをせず、「そうでしたか」と、うなずきのスピードや、抑揚の深さなどの工夫で、関心を持って、丁寧に受け止めいることがわかる反応であれば、それは、きっと十分に相手に対して、自然な気配りになっているといえるのです。