「韓国イージス艦」なぜ武装テンコ盛り!? 海自「あたご」「まや」とは似て非なるワケ 実は「ならでは」の事情も

AI要約

世宗大王級は韓国海軍初のイージス艦で、アーレイ・バーク級やあたご型よりも武装が強力である。

世宗大王級は全長165.9m、満載排水量が1万455トンで、VLSが128セル搭載されている。

韓国製K-VLSとアメリカ製Mk.41を組み合わせることで、対地・対潜能力を確保しており、独自装備も搭載している。

「韓国イージス艦」なぜ武装テンコ盛り!? 海自「あたご」「まや」とは似て非なるワケ 実は「ならでは」の事情も

 2024年現在、韓国海軍はイージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦の増備を進めています。

 今年(2024年)末には最新の「正祖大王(チョンチョデワン)」が就役する予定ですが、その原型といえるのが世宗大王(セジョンデワン)級です。「正祖大王」は、この世宗大王級の改良型という位置づけになります。

 いうなれば、世宗大王級は韓国初のイージス艦と位置付けられますが、モデルとされたアメリカ海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦や、ほぼ同じ大きさである海上自衛隊のあたご型護衛艦と比べると圧倒的に武装が強力です。ただ、そこまで大量の武装を備えたのには、韓国ならではの事情もあったようです。

 そもそも、世宗大王級は2008年から2012年にかけて3隻が建造されました。就役は、1番艦の「世宗大王」が2008年12月で、2番艦「栗谷李珥(ユルゴク・イ・イ)」が2010年9月、そして3番艦「西厓柳成龍(ソエ・リュ・ソンニョン)」が2012年9月と、ほぼ2年おきになります。

 なお、1番艦と3番艦は現代重工業で、2番艦は大宇造船海洋(現ハンファ・オーシャン)でそれぞれ建造されています。

 世宗大王級は、満載排水量が1万455トンで船体寸法は全長165.9m、全幅21m。艦橋を始め、その後ろにある煙突などの上部構造物、そしてヘリコプター格納庫へと続く船体形状はアーレイ・バーク級やあたご型と似ているものの、艦首に備えた波よけ用の囲い、いわゆるブルワークや、艦内に収めた搭載艇などに、独自のデザインを見ることができます。

 そして、この船体に固有武装として垂直発射システム(VLS)計128セルに加え、対艦ミサイル(SSM)4連装発射筒4基、近接防空ミサイル(RAM)発射機1基、近接火力システム(CIWS)1基、3連装魚雷発射管2基、そして5インチ単装砲1基が搭載されています。

 世宗大王級がモデルにしたのは、アーレイ・バーク級のなかでも後期型といえる「フライトIIA」ですが、このクラスはVLSが96セルです。前出した日本のあたご型護衛艦も、同じくVLSは96セルです。

 一方、世宗大王級は前出のようにVLSだけで128セルもあります。なぜ、日米のイージス艦よりもVLSの数が多いのかというと、アメリカのロッキード・マーティン製Mk.41と、韓国が独自開発したK-VLS-I、両者を備えているからです。

 Mk.41は船体前部に48セル、後部に32セル搭載しており、艦対空ミサイルとして「スタンダード」SM-2MRブロックIIIAを搭載します。一方、K-VLS-Iには国産兵器が搭載できるようになっており、艦対地巡航ミサイル「海星2」や対潜ミサイル「赤鮫」などの発射に用いられます。

 ただK-VLSは国産ミサイル発射用に開発されたため、Mk.41に搭載するアメリカ製兵器を運用する能力は持っておらず、とうぜん「スタンダード」SM-2の発射機能もありません。つまり、両者は全く互換性がないため、弾道ミサイル防衛を含む広域防空艦として運用するためにはアメリカ製Mk.41は外すことができず、対地・対潜能力を確保するためにはK-VLSも必須という状況で、これだけ多くのVLSを搭載しているといえるでしょう。

 なお、韓国の独自装備は対地・対潜ミサイルだけではありません。対艦ミサイル発射筒に搭載されるのは、国産の亜音速SSM「海星」。これは、韓国の水上艦艇における対艦兵器の主力であり、射程は180km程度とされています。

 また近接防空システム、いわゆるCIWSは日米の艦艇で見られる口径20mmのバルカン・ファランクスではなく、オランダのシグナール(現・タレス)が開発した口径30mmの「ゴールキーパー」です。ヘリコプター格納庫は左右両舷にあり、「スーパーリンクス」2機を運用できます。